英語の単語の意味を頭では理解しているんだけど、文化の違いからか、文脈を読み違えるのが、とんちんかんな受け答えをしてしまうことがあります。
こちらで初めて仕事に面接に行ったときのことですが、面接官の人が仕事の内容を説明してくれて、そのあとで「Can you do these comfortably?」って聞いてきたんですね。言い回しはちょっと違ったかもしれないけど、comfortable だか comfortably だかは間違いなく入っていました。その頃の私は日本の Work Ethics (労働観) が染みついていたので、仕事っていうのは comfortable にしてはいけないもの、血と汗と涙でもって遂行しないといけないものと思っていたんです。それで、高らかに「No」と答えてしまったんです。「私が仕事を comfortable にするわけないじゃないですか」と。しかし、これは「楽ちんに仕事をする」という意味ではなくて、「余裕を持って仕事をする」ぐらいの意味だったのです。いわば、面接における決まり文句で、仕事が欲しいのであれば「Yes!!」と感嘆詞 2 つぐらい付けて答えるべきなのです。当然、面接には落ちたんですが、幸いなことにどうしても日本人が欲しかったみたいで、数週間後にパートタイムで働けることになりました。
また、別の事例ですが、私は会社で人を雇っていたこともあるので、referee として電話がかかってくることがあるのです。つまり、ウチの会社で働いてくれていた人が他の会社に応募したとき、その会社の人が身元調査みたいな感じで私に電話をかけてくるのです。あるとき相手の人が、「Would you like to hire her again in the future? (将来この人をまた雇う可能性はありますか?)」みたいに聞いてきたんですね。そのとき私は「No. I have no vacancy. (いいえ。いま募集してないので) 」って答えたんです。ところがこれもまた決まり文句で、「機会があればこの人をもう一度雇いますか?」ぐらいの意味でして、その人を推薦したいのであれば「Yes」って自信をもって答えなければいけないところなんです。このときは相手が親切な人で、これは決まり文句なんだよって教えてくれたので事なきを得ましたが。
この間、高機能自閉症の一種ともいわれるアスペルガー症候群に関する本を読んだんです。アスペルガー症候群の人は言外の意味を汲み取ることが苦手らしいんですね。たとえば、誰かが「今日は寒いですねー」と声を掛けてきたとします。声を掛けてきた人は感覚を共有して同意してほしいだけなのに、いきなり「きょうは5度です」と言ってしまう。また、レストランのサービスが悪くて誰かが「さすがに高級レストランはサービスが違うね」と皮肉を言っても、本当にレストランを褒めているんだと受け取ってしまう。
また、スタートレックっていうテレビ番組/映画にミスター・スポックっていう登場人物が出てきますが、ご存じのようにこの人は感情表現を出さずに論理だけで言葉をしゃべるんですね。私は会話ではなくて机の上での勉強で英語を覚えたので、英語でしゃべるときはときどきそんな風になってるんじゃないかと思うことがあるんですが、ミスター・スポックみたいに英語をしゃべりたいなー、と思うことがないわけでもないのも事実であります。
(写真は裃を着て comfortable な笑みを浮かべるミシュラン坊やさん)