たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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昔は良い意味だったのに今は悪い意味に使われる単語 (egregious など)

 

最近よく見る英単語に egregious というのがあります。これは「ものすごくひどい」という意味の単語で、平たく言えば very bad です。でも、very bad と書くと小学生みたいなので、新聞の意見記事などには egregious がよく使われるという話。

 

これはアイリッシュ・タイムズのフランク・マクナリーさんのコラムに書いてあったことですが、ロンドン・タイムズ紙の読者欄では、この単語を今年の流行語大賞にしてはどうかという投稿が取り上げられたそうです。

 

www.irishtimes.com

 

egregious は実は昔はいい意味で使われていたそうです。もともとはラテン語の “e grege” で、これは “out of the flock”、すなわち「群を抜く」ぐらいの意味でした。

 

古代ローマの詩人ホラシウスは、執政官レグルスのことを「egregious exsul」と詩っています。これは「Glorious Exile」、つまり「栄光ある流刑者」という矛盾語法です。レグルスは古代ローマではそのストイックな英雄的行為で崇められています。250BC にカルタゴ人に捕らえられたレグルスは、まぶたを切り取られるか、閉じられないようにくっつけられて、直射日光にさらされ、目がつぶれて、最後には不眠で死んだそうです。

 

現代のイタリアでは、この単語はまだポジティブな言葉として生きています。形式ばったあいさつで「Egregio Signore」というと「Dear Sir」ぐらいの意味になるそうです。

 

ヘンリー・ワトソン・ファウラーという人が編纂して1926年に出版した「Modern English Usage」という有名な本があるのですが、この本の説明では egregious にまだポジティブな意味はあるものの、「the egregious Jones」という例も載っています。これは、ジョーンズは悪名高いいやな奴、という意味になると説明されています。

 

ファウラーの本では、egregious のようにいい意味だったのに悪い意味に変化してしまった単語を「worsened words」と呼んでいます。

 

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逆方向に進んだ珍しい例は prestigious です。この単語は以前は「人の目をあざむくような」「錯覚をおこさせるような」という悪い意味でした。今ではもちろん「立派な」「一流の」というとてもいい意味になっています。

 

余談ですが、prestige はフランス語から英語に入ってきた単語ですが、今でもフランス語風に第二音節にアクセントがあります。同じくフランス語由来の vestige (痕跡) は今ではアクセントが第一音節に来てしまったのですが、prestige も同じ運命をたどりそうになったものの持ちこたえたそうです。

 

また、言葉が良い意味から悪い意味に変化するとき、ゆっくり進行するものと、突然変わるものがあります。egregious はゆっくりの例。急激に変わった単語には appeasement があります。

 

appeasement は昔は「楽しみ」とか「満足」という意味でした。しかし、ネヴィル・チェンバレン英国首相がナチスに対して宥和政策をとったわけですが、これが英語で appeasement なんですね。日本語では宥和にそんなに悪いイメージはないかと思いますが、英語では appeasement はかなりネガティブな意味の単語となりました。

 

マクナリーさんは iconic や passionate もいずれ軽蔑をもって使われるのではないかとみています。とにかく使われすぎなんですね。たとえば、近い未来、iconic の意味は「価値が高いといわれているけれども、実際には平凡または悪いもの」になるのではないかと思っているそうです。マクナリーさんの友人で PR を仕事にしている人によると、今でもクライアントはこれらの単語を好むそうです。

 

Passionate の方も「We are passionate about ~」というフレーズを嫌になるほど目にしますね。そのうち飽きられるどころか、嫌悪の目で見られるようになるのでしょうか。

 

悪い意味に代わったもう1つの例は、sleaze です。これは現在は主に政治家の「不祥事」の意味で使われます。ファウラーの本の1926年版にはこの意味は含まれていません。最近のものなんですね。

 

割と最近まで、sleazy という単語は主にテキスタイルの世界で使われていました。1990年にはアイリッシュ・タイムズのファッション記事に sleazy material という表現があるのですが、これはシェニール糸で織られた繊維のことを差していたそうです。

 

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