今日の新聞に、オブライエンズ・アイリッシュ・サンドイッチ・バーが Examinership に入ったと報道されました。オブライエンズはアイルランドのコーヒー・フランチャイズの大手で、イギリスをはじめ、北米や東南アジアなどでも店舗を展開しています。Examinership は倒産法のひとつで、日本だと民事再生法、アメリカだといわゆるチャプター 11 に近いみたいです。Examinership ってよく聞く言葉だったんだけど、アイルランド独特の制度らしくて、単語が辞書に載ってなくて驚いた。
先月はオブライエンズの英国事業が同様の法的手続きを取ったというニュースが流れていたので、やばいんだなーと思っていたのですが、ここまで悪かったとは。今の段階では、とりあえず少なくとも一部の店舗は通常どおりの営業を続けるそうですが。
私自身、これまでオブライエンズのカプチーノを何千杯も飲んできたので、今回の Examinership のニュースは感慨深いものがあります。私は 97 年ぐらいまで煙草を吸っていたんですが、ふとしたきっかけですっぱりやめることができたんです。それで、ご褒美として、毎朝カプチーノとチョコロールを頂くことにしたんですね。当時借りていたボールスブリッジの事務所の近くにあったのがオブライエンズのキオスク (上の写真) で、ほぼ毎朝通いました。それが、2007 年に事務所をたたむまで続いたわけですから、1 年で 250 杯としても全部で 2500 杯はいってますわなー。
オブライエンズのオーナーはブロディー・スィーニーさんという人ですが、この人が 80 年代の終わりにビジネスのネタを探しにアメリカに出かけ、Subway チェーンを見て、「これだ!」と思いついたのがこのオブライエンズのフランチャイズ・ビジネスでした。スィーニーさんは、すかさずフラットの改装をするからと嘘をついて 3 つの銀行から 7000 ポンドずつ借りた上、この 21,000 ポンドを貯金したお金だと嘘をついてバンク・オブ・アイルランドから 29,000 ポンド調達し、計 50,000 ポンドの元手で最初の店をサウス・グレイト・ジョージズ・ストリートに出したそうです。
80 年代の終わりといえば、アイルランドにまだコーヒーを飲む文化がなかった頃ですから、先見の明があったというか、無謀というか。数年間は赤字が続いたのですが、90 年代半ばからの経済的発展とともに売上も増加します。失業率が下がり、可処分所得が増え、人々はランチのサンドイッチを自分で作らずに買うようになったんですね。だから、オブライエンズはケルティック・タイガー (アイルランドの 1995 年から 2007 年くらいまでの急激な経済成長の時期をこう呼びます) を象徴するブランドとして語られることもあります。
私が通っていたキオスクでも、最初はフランチャイズ・オーナーの家族の人が店番をしてたんですけど、中国人の店員さんに変わり、その後はスペイン人や東欧系の店員さんに変わっていきました。国の政策や EU の拡大によってアイルランドに働きにやってくる人たちの国籍がだんだん変わっていったわけですけど、その縮図のようでした。
私がよく行くもうひとつのチェーン店に Coffee Society というのがあります。ここは小さなチェーン店ですが、コーヒーがたいへん美味しいのです。イタリア人の友人も、ここのコーヒーがダブリンでは一番おいしいと言ってましたから、たぶんコーヒーの味に関しては間違いないと思います。ここも最近はコーヒーとサンドイッチでまとめて 5 ユーロっていうキャンペーンを始めました。物価が下がるのは嬉しいですけど、景気の悪い話ばかりだとやっぱり元気が出ないですねー。