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映画『パジャマガールズ』

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Pyjama Girls
2010 年、アイルランド
監督: Maya Derrington
出演: Lauren & Tara

 

アイルランドのドキュメンタリー映画が面白いという話なんですが、この『パジャマガールズ』も面白かったです。

 

ダブリン郊外のタフなエリアに住むティーンエージャーの女の子のお話です。

 

主人公のローレンの家庭はかなり複雑で、お母さんは麻薬には嵌って、ギャングとも付き合いがあったみたいで、刑務所に入ってるのかはっきりとはわからないんだけど、とにかくいない。今は近所のおばさん (乳母? Nanny と呼ばれている) と一緒に住んでる。お父さんはたぶん誰かわからない。妹がいるんだけど、妹は伯母さんと住んでる。ローレンはいつも相棒のタラと一緒にいる。2 人とも学校はドロップアウトしている。タラの家はお母さんもちゃんといて、ローレンの家ほど複雑ではないみたいだ。

 

映画は淡々と 2 人の日常をつづります。事件は何も起こりません。主人公 2 人がローレンのベッドルームでたわいもない会話をしているところから映画は始まります。ここでは彼女たちはどこにでもいる普通の女の子です。ところが、ローレンとNannyの会話やら、ローレンのモノローグから、ローレンが理想的とはとてもいえない環境で育ってきたことがわかります。だけど、ローレンはそれについて特に怒りとか自己憐憫みたいなものは感じてない。彼女の口調から判断するかぎり。

 

題名の「パジャマガール」なんですけど、ダブリンの失業者の多いエリアとかだと、パジャマでうろついてる女の子がいたりするんです。この映画の解説文によると「若い女性がパジャマを着て外に出るという世界的な現象云々」と書いてあったんですが、世界的なんですか?

 

一般的にはダブリンでもパジャマで外に出ているのは見苦しいこととされていて (当然ですけど)、映画の中でもラジオのフォンイン番組 (視聴者が電話かけてくる番組) の音声を流す形でそういう意見も紹介されています。寝間着くさいだろ、とか。いや、寝間着なんですけどね。DJ は「社会が私に何も気を遣う気がないなら、なんで私が社会に気を遣わないといけないのか、みたいな社会的ステートメントなのかもしれない」ともっともらしいことを言っていましたが、ローレンは「この地域に住んでる人はみんな昔から知ってて家族みたいなものだから、家の中をパジャマで歩き回るのと一緒」と言っていました。

 

正直なところ、実際に道端なりスーパーマーケットなりでパジャマ着てる女の子の一群に出会ったら、私は目を合わせないようにします。怖いので。その地域に住んでる人以外、みんなそうだと思う、たぶん。だから、この映画がなかったら、ほとんどの人にとって彼女たちは謎のままだったし、私が彼女たちの声を聞くことはなかったと思う。映画は彼女たちを悪魔のように描くわけでも、天使のように描くわけでもありません。淡々と、あんまり恵まれてるとはいえない境遇を生きてきた彼女たちに声を与えます。

 

絶対アクセントがきつくて何言ってるか分からないだろうなーと覚悟して観にいったのだったが、分からないのは私だけではないみたいで、ちゃんと全編英語字幕が付いていた。

 

2010/9/30追記: お友達に教えてもらいましたが、Nannyはおばあちゃんのことらしい。