ダブリンから北に車を 30 分くらい走らせたところにレイタウン (Laytown) という小さな町があります。この町では、年に 1 回だけ、砂浜で競馬が行われます。公式な競技として砂の上を走る競馬は、ヨーロッパでもここを含めて数か所しかないそうです。
年に一度の開催ですので、施設はすべて仮設となります。こちらがパドックです。
電光掲示板みたいなところに馬の名前とオッズが掲示されます。個人営業ですので、掲示板の数だけ賭け屋さんがあります。オッズもわずかに異なる場合がありますので、賭けたい馬が決まったら、一番いいオッズを出してくれてる賭け屋さんを探してそこで賭けることになります。賭け屋さんの中には、双眼鏡を取り出して、他の賭け屋さんのオッズを偵察している人もいました。
10 年くらい前にレパーズタウンの競馬場に連れて行ってもらったときは、チョークで黒板にオッズを書いてましたが、技術革新ですね。チケットも後ろで機械を操作するだけで印刷したものがでてきます。
レースが始まる前にちょっと雨が降ってきたので、私たちはお酒も飲める仮設テントの休憩所で雨宿りしていました。そうすると、アイルランドではよくあることなんですけど、見知らぬ人が話かけてきます。話かけてきたのは 30 歳ぐらいの男の人だったんですが、私たちが日本人だとわかったらしく、競走馬のウォッカの話をしてきました。ウォッカは引退後に繁殖馬としてアイルランドに来てるんですね。
私が競馬好きだったら、ウォッカの話で盛り上がれたんですけど、私はあんまり馬は詳しくないので、ちょっと申し訳なかったです。そしたら、第一レースで有望な馬を教えてくれて、それは Richelieu という馬なのでした。出走 5 分前だったんですけど、せっかく教えてもらったんだし、まあいいやということで 5 ユーロ分買いました。オッズは 4 倍。
コースは直線 1400 メートルです。かつては折り返してレースをしてたそうなんですが、あるとき折り返し地点で事故が起き、多くの馬が安楽死させられてしまったのです。それで保険料が高騰してしまい、今は直線で争われているとか。また、平日に開催されるのは、休日に開催すると人が来すぎて収拾つかなくなるからだそうです。
浜に降りることもできるらしいんですけど、高くなってるので見やすいからか、ほとんどの人は岸から見ています。観客が入れるのはゴールポストのあたりだけですね。レース序盤から中盤にかけては PA の実況を頼りにするしかありません。
自分の賭けた馬を応援したかったんですけど、馬、速いっすね。番号を確認する間もなくゴールイン。番号じゃなくて勝負服で識別するべきなのかな。パドックに戻って大画面で確認したら、外れてました。
全部で 6 レースなんですが、3 レース目以降は浜に降りて観戦しました。馬は一瞬で目の前を駆け抜けます。かぶりつきで見てたんですけど、鞭の音も聞こえて迫力ありました。
私は競馬の面白さはあんまり理解できずにいたんですけど、今回は馬を間近で見ることができたし、虹の架かった美しい景色の中でレースを楽しむことができたので、とても良かったです。
こちらの競馬は社交的な場ということで、大きなレースだと着飾った人がいっぱい来たりするらしいですけど、この浜競馬はどちらかというと年に一度の田舎の夏祭りといった風情です。近所のお兄ちゃんやおっちゃんがいっぱい来てて、話しかけられても訛りがきつくてわかりづらかったです。子供たちは、馬そっちのけで砂遊びしていました。
NHK の人が取材に来ていたので、近いうちに放送されるかもです。