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映画「Colony」

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8/19 at Lighthousecimena
Colony (2010 年、アイルランド)
監督: Carter Gunn, Ross McDonnell
出演: アメリカの養蜂業者のみなさん

 

少し前になるんですが、「Colony」というドキュメンタリー映画を見ました。監督もアイルランド人だし資本もアイルランドですが、アメリカの養蜂業者の生活を追ったものです。だから、ここで言う Colony は、蜂の巣のことになります。

 

私は、動物の生態に関するドキュメンタリーがものすごく好きで、それから、産業がどういうふうに成り立ってるかなんてのを知るのも結構好きです。工場見学とかですね。だから、この「Colony」は、蜂の生態の話もあるし、養蜂産業の内部事情もうかがうことができるしで、私にとっては一粒で二度おいしい映画だったと言えます。

 

新聞などでも報道されているので耳にされた方もいると思いますけど、蜂が大量に突然死するっていう問題が起きています。Colony Collapse Disorder (CCD) っていうらしいんですが、日本語だと「蜂群崩壊症候群」というそうです。

 

初めて CCD の話を聞いたとき、呑気な私は蜂蜜を食べられなくなっちゃうのかなーと思ったのですが、そんな簡単な話じゃありませんでした。養蜂業の人は、蜂蜜やロイヤルゼリーを売るだけで暮らしてるわけじゃなかったのです。

 

農園に行って、蜂を巣箱から飛び立たせ、蜜を集めさせるとともに、授粉も手伝う。それで、農園からお金をもらっています。Pollination って言ってましたが、これがないと養蜂業は成り立たないとか。だから、蜂がいなくなると、受粉できず、実がならず、果実などは供給不足になり、食糧危機に陥ってしまうのだそうです。こりゃ大変です。

 

原因はわかってないらしくて、養蜂業者の人は、大手製薬会社が作った新しい農薬が原因なんじゃないかと思っている。毒がまわってその場で蜂が死んじゃうとか単純なものじゃなくて、DNA に悪さされて次の世代に影響が出るとかの可能性もある。帰巣本能が失われちゃうとか。製薬会社の広報の人も出演してインタビューに答えていて、当然だけど、影響はないはずだと否定している。

 

映画は養蜂業の人の日常にも迫ります。登場する養蜂業者の人が自分で言ってるんだけど、養蜂業の人は普通じゃ務まらないよーと。蜂とともに北米大陸を旅して回ってるわけだから。メインで扱われてる一家は、カソリックなのかなー、とても子沢山で、家業として養蜂を行っている。お父さんは先生だかで、稼いだお金を投資して、子供たちが蜂の面倒を見ている。長男でもまだ 20 代と思う。日本人の一般的な宗教観からすると引いちゃうくらいに熱心に信仰を実践している。

 

授粉の値段を農園主とシビアにやり取りするシーンとか、経済活動としての養蜂産業も描かれています。リーマン・ショックの後で、経済状況が悪いから、契約した値段より低い値段で授粉をやってくれと農園主が言ってくる。養蜂業者は契約なんだからと突っぱねようとすると、農園主は、じゃあもう次の契約更新はないからとか。巣箱ひとつで 180 ドルだ、いや 160 にしてくれとか。ウチのは good bees なんだなどと、ほかの産業でもよくありそうな根拠のないセールストークとか。怒ったお母さんが、そんな安い値段じゃやれないわよ、と交渉の場に乗りこんできたりとか。

 

映画は淡々と進むのですが、そのせいかどうかわかりませんが、人の営みも蜂の営みも遠くから見ればそんなに変わらないよな、という気持ちになりました。そういう結論でいいのかどうかはわかりません。