たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

掘り出し物

今日のアイリッシュ・タイムズ紙の一面は、骨董品のオークションの話でした。

 

昨日、ダロウ (Durrow) っていう小さな田舎町の骨董品屋さんで競売が行われたんだけど、骨董品屋さんが 150 ユーロ (2 万円くらい) のガイドプライスを付けた中国の花瓶が、110,000 ユーロ (1300 万円くらい) で売れたっていう話。

 

最後まで競ったのは、ロンドンで骨董品屋を営むリチャード・ピーターズさんと中国は北京からこのオークションのためだけにダロウを訪れたチェン・ロングさん。チェンさんは会計士のだんなさんが骨董趣味があるらしくて、携帯電話でだんなさんの指示を受けながら入札したんですが、100,000 ユーロでストップと言われたらしくて、この花瓶はピーターズさんのものになりました。

 

今はインターネットで情報が事前に公開されるから、掘り出し物があると世界中から人が集まってくるみたいです。

 

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写真に写ってるのがピーターズさんとチェンさんなんだけど、負けたチェンさんも物凄くさわやかな笑顔ですね。正々堂々と勝負して、ノーサイドの笛が鳴ったあとみたいな。

 

この花瓶は、もともとはカーロー県出身の姉妹が所有していたもの。この姉妹は今はお亡くなりになったんだけど、1940 – 50 年代にアメリカはフィラデルフィアに住んでた。カーローに帰ってきたときにこの花瓶も持って帰ってきたのだろうと推測されています。

 

ピーターズさんによれば、この花瓶は清朝第六代皇帝の乾隆帝 (1735 -1795) のコレクションだったもので、19 世紀にイギリス、フランス、またはアメリカの兵士によって宮殿から略奪されたものだろうとのこと。

 

落札したピーターズさんはもちろん大喜び。「I got a bargain」(安く買えてよかった) だって。チェンさんも嬉しそうなのは、たぶん他の掘り出し物をいくつか安い値段で手に入れたからだとみた。この花瓶を売りに出した匿名の家族はもちろん「chuffed and delighted」(大喜び)。

 

今日の朝のレイ・ダーシーのラジオにはオークションを主催した骨董品屋さんが電話出演。ガイドプライスが異様に低くて目利きができなかったってことだから恥ずかしいはずなんだけど、なんだか声が弾んでいます。それもそのはず、骨董品屋を 60 年やっててこんなに高い値段で売れたのは初めてだとか。たぶん手数料は 10% とか 15% のはず。評価額が低かった理由は、その分野の専門家ではなく、偽物も多い分野であることから、審美的な評価に基づいてのみ価格を付けたからとのこと。でも、このチョンボがなかったらこの楽しいストーリーは生まれなかったわけですから。

 

たまたま競売場にいあわせたオークション参加者も、「いいもん見させてもらった」と興奮しきり。その中のひとり、デビッド・ステイプルトンさんは「その場にいなきゃ絶対だめ、そいうときってあるだろう。1916 年の GPO とかさ」。GPO (General Post Office: 中央郵便局) っていうのは独立運動イースター蜂起のとき (もちろん 1916 年) に反乱軍が拠点とした場所。もう 100 年近く前の話なんだから、あんた、その場にいなかったでしょ。

 

四半千年紀を生き延びた小さな花瓶をめぐってなんかみんながホクホクしちゃったっていう話でした。