たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

松本山雅、JFL 昇格おめでとう (2/2)

 

イメージ 1

 

それから名前です。日本のサッカー・クラブはカタカナの造語の名前が多いです。それもまあ現在の日本を表しているということで悪いことではないと思いますし、ありふれた名前だと商標登録に引っかかるという問題もあります。サッカー・クラブで最も重要なことは経済的な問題ではありませんけど、ある程度は重要だし、この世の中で経済的な問題を抜きに存在できる組織なんてないですから、その点はまじめに考慮しないといけません。しかし、松本山雅はまず和名であることが明確にユニークだし、山雅っていうのがクラブの結成に大きな役割を果たしたお店の名前ですから、連綿と続くクラブの歴史みたいなものを体現しています。

 

また、ニックネームなんですけど、たとえばアメリカ式のスポーツ文化だと、カージナルスとかベアーズとかが正式名称に入っていて、これも上から降ってきたような印象がします。日本のサッカー・クラブもそうですね。でも、欧州サッカーだと、たとえばアーセナルならガナーズ (Gunners)、ウェストハムならハマーズ (Hammers)、サンダーランドならブラック・キャッツ (Black Cats) などと正式チーム名とは別に自然発生的なニックネームが付いています。松本山雅も、チームの正式名称とは別に、ターミガンズ (長野県の県鳥である雷鳥を意味する英語) っていう愛称で呼ばれています。こういうのも好きです。

 

あと、私が思うのは、松本の人たちが日本で最も彼ら自身のサッカー・クラブを必要としているんじゃないかということです。松本市と長野市は歴史的な経緯があって対抗意識が強いと聞きます。そして、県庁所在地でもあり、オリンピックも開催した長野市のほうがたぶん存在感は大きいんじゃないでしょうか。

 

だからこそ、松本の人たちは彼ら自身を祝福し、また他者に対して自分たちの存在を知ってもらうための象徴、っていうかビーイクル (乗り物) を必要としていたのではないかと。いや、もちろんそれがサッカー・クラブである必要はないんだけど、サッカー好きの私としては、それがサッカーだったら嬉しいなと。

 

ちょっとおおげさな言い方をしてしまいましたし、欧州的だから無条件でいいというわけでもないんですけど、ヨーロッパの人たちは自分が何者かという意識を強くもっていて、自分の生まれた街に大きな誇りを抱いているし、自分たちを育んでくれた場所に感謝の気持ちも持っていると思います。そして、それは他者と関係を結ぶ時にとても大切なことだと思うんですね。自分が何者であるかを示すことが。何者かわからない人と仲良くはなれないし。

 

サッカー・チームをなんであんなに一生懸命応援するのか? と疑問に思う人もいます。スポーツ・チームなんてあなた個人とは何にも関係ないじゃん、と。チームが勝ったからって、あなたが偉くなるわけじゃないじゃん、と。でも、その考え方はちがうと思います。人は、コミュニティーにおいて先人たちが残してくれたリソースを享受して育つわけですから、そのリソースをどう発展させ、後に続く人たちにどう受け継いでいくのかを考えるのは私たちの責任です。サッカー・クラブは、街を思う人たちのひとつの象徴として存在するわけで、それを応援することは決してひとりよがりで無意味なことではありません。

 

ああ、ちょっと説教臭くなってしまったかもしれません。すみません。あと、スポーツに関して私がどうしても欧州びいきになってしまうのは、おそらく私がアイルランドに長らく住んでいるからです。ご容赦ください。

 

J リーグに上がるときに名称変更の問題が持ち上がるかもしれませんが、できればこの名前のまま存続してほしいです。また、長野県には J リーグのクラブが 2 つ存在するのは無理だから、長野県全体で応援できるようなチーム名、たとえば信州山雅などという名称に変更すればどうかという意見も出てくるかもしれません。しかし、松本のクラブとして、そして松本の人たちが必要としたからこそここまで成長してきたわけですから、そのアイデンティティを捨てず、松本の名前を冠したまま頑張ってほしいとおもいます。

 

これは、もちろん部外者のロマンチックで無責任な希望だということはわかっています。より大きなクラブを目指して広い支持層を獲得するために、当事者のサポーターたちが名称変更を決定するのなら、私なんかが口出しすべき問題ではないのはわかっていますが。

 

とにかく、松本山雅の JFL 昇格おめでとうございます。JFL でも素晴らしい成績を残して、J リーグまで駆け上がってください。