先週土曜日にダブリンでアイルランドとイングランドのサッカーの試合があり、アイルランドは2対0で負けたわけですが、両国はいろんな因縁があるためピッチの内外でさまざまな出来事がありました。
イングランドにはデクラン・ライスという選手とジャック・グリーリッシュという選手がいるのですが、この2人はアイルランド国籍も持っており、かつてはアイルランド代表でもプレイしたことがあるのです。ライスはユースの時代からずっとアイルランド代表でプレイし、シニア代表でもキャップを3つ獲得しています。公式戦でなければ別の国の代表になることはルール違反ではありませんので、2019年以降はイングランド代表です。グリーリッシュもユース時代はずっとアイルランド代表でした。
今回の試合はアイルランドのホームゲームでしたから、2人ともボールに触るたびにブーイングされたわけですが、イングランドの得点はこの2人が決めたんですね。ライスは喜びを押さえていましたが、グリーリッシュは普通にゴール・セレブレーションしていましたね。
あと面白かったのは、ライスが4回以上ファールを受けるという賭けがブックメーカーから提示されていたことです。アイルランドの選手がライスを削りにいってくれるんじゃないかと期待する向きもあったようですが、選手たちは大人なのでもちろんそんなことはするはずもありませんでした。
それから、両チームとも監督が新しくなって初めての試合だったんですが、アイルランドはアイスランド人のヘイミル・ハルグリムソン監督、イングランドはリー・カーズリー監督代行の初陣です。カーズリーはバーミンガムの生まれなのですが、祖母の1人がアイルランド人ということもあり、選手時代はアイルランド代表でプレイしました。監督を探していた時期にアイルランドも彼を候補に挙げていたようです。
それでまたよせばいいのにイングランドのメディアが試合前にゴッド・セイヴ・ザ・キングを歌うのかとカーズリーに聞いたんですね。カーズリーは、試合前はサッカーに集中する時間なのでこれまで(選手時代もアイルランド国歌を)歌ったことがないとして、国家を歌わない理由を説明したんですね。
そしたら一部のメディア (テレグラフ紙とデイリーメール紙)は一面でカーズリーを非難する記事を出したんです。「フットボール協会はリー・カーズリーを今日のうちにクビにすべきだ。国歌を歌うのを拒否するのは裏切りであり、イングランドの監督にはふさわしくない」などと記事にはかかれています。
イングランドは昨日のフィンランド戦にも快勝しましたし、カーズリーが監督代行から正式に監督に昇格するのか注目です。
また政治関連ではキア・スターマー英国首相が試合に合わせてアイルランドを訪れ、アイルランド首相のサイモン・ハリスと会談。ブレグジット以降ぎくしゃくしていた両国の関係の改善をはかることが目的だったようです。フェニックス・パークのファームレイ・ハウスでミーティングを兼ねた昼食をとった後、AVIVAスタジアムに観戦に向かいました。
試合前の国歌斉唱では、イングランドの国歌に対して一部のアイルランド人サポーターがブーイングをしたそうですね。アイルランドのミホール・マーティン副首相は「残念である (I wasn’t happy with it)」とコメントしたそうです。表現の自由に関係する問題ですから、政治家はまあそれほど強く非難するわけにはいきません。
私は以前、北アイルランドとアイルランドの試合を観に行ったことがあるのですが、北アイルランドは試合前にゴッド・セイブ・ザ・クイーン (当時、今は「～キング」) を歌うんですよ。そのときは2～3人がブーイングをしようとしたところを周りの人がシーと言って止めてました。まあ北アイルランドとイングランドでは違うということでしょうか。
参考資料:
God save Lee Carsley as English press lose their minds over singing of anthem – The Irish Times
