キャッスルダーモットからまた車で10分ほど走ってムーン (Moone) に移動します。このあたりは道路もよく整備されています。ムーンはカフェが1つ、パブが1つ、教会が1つ、学校が1つくらいのほんとうに小さな村です。
この村のハイクロスは高さが5メートル30センチほどで、アイルランドで2番目の高さを誇ります。ちなみに最も高いのはラウズ県のモナスタボイスにあるハイクロスで、こちらは7メートルです。またムーンのハイクロスは保存状態が良いのでも有名です。
こちらのハイクロスは上部、中部、下部の3つの部分から構成されています。まず1835年に上部と下部が土の中から見つかり、1893年に中部も見つかったことから、このハイクラスの全貌が明らかになりました。
このハイクロスには、ライオンの穴の中のダニエル、群衆に食物を与える奇跡、火の燃える炉の中の三人の子供など、新約聖書と旧約聖書の両方のシーンが描かれています。
ムーンのハイクロスの特徴は、聖書のシーンが基部 (下部) に描かれていること、他のハイクロスに比べて題材がはっきりと描かれておりわかりやすいこと、人間の体が単純な四角形で描かれているなど素朴画のような味わいがあることなどです。
たとえば次の写真では、下部に12人の使途が3列に並んでいます。そのすぐ上のパネルではキリストが十字架に掛けられています。非常に簡素化されていてわかりやすいです。
それから次の写真の向かって左側に見える面 (正面) では、一番下がライオンの穴の中のダニエル、その上がイサクの生贄、その上が堕落です。向かって右側に見える面 (側面) には、下から 6 つの頭を持つ怪物、聖アントニウスの誘惑、砂漠でパンを分け合うパウロとアントニウスです。
こうした絵は、読み書きのできない人々にキリストの教えを伝えるために用いられたといいます。
ハイクロスの上にビニールのような天井が付け加えられているのはちょっと興ざめですが、貴重な遺跡を守るためにはしょうがないのかもしれません。
ムーンの壁埋め込み式ポスト。
キャッスルダーモットからムーンに向かう道の途中にいたプレスリー。