
オリンピア・シアターに演劇『Mother of All the Behans』を観に行きました。アイルランドの作家ブレンダン・ビーアンのお母さんであるキャスリン・ビーアンさんの物語です。
キャスリンさんは1889年にダブリンの商売人の娘として生まれたのですが、お父さんが早くになくなってしまい、インチコアの孤児院に預けられたりしていました。長兄のパダー・カーニーは独立運動の活動家で、現在のアイルランド国歌の作詞した人として名を残しています。この長兄を通じて植字工でアイルランド義勇軍メンバーのジャック・ファーロングと出会い結婚。イースター蜂起のときには彼女自身も伝令などをして蜂起軍を助けていました。
2人の子供を授かるのですが、夫はスペイン風邪で早逝。その後、WBイェイツのミューズとして知られるモード・ゴンの家で家政婦として働いていたときにイェイツや画家のサラ・パーサーと知り合います。このころパーサーが描いたキャスリンの絵がアイルランド国立美術館に所蔵されています。
1922年に塗装工で労働組合活動家のスティーブン・ビーアンと再婚。5人の子供をもうけることになるのですが、そのうちの1人がアイルランドを代表する作家のブレンダン・ビーアンです。ブレンダンだけでなくブライアンとドミニクの弟2人も文筆で身を立てることとなりました。今回の劇は、キャスリンの回想をブライアンがまとめた『Mother of all the Behans』が原作となっています。劇としての『Mother of all the Behans』の初演は1987年です。
今回の公演でキャスリンを演じるのはダブリンのリバティ地区出身のイメルダ・メイです。この人はシンガーで、もともとはロカビリー・リバイバルみたいな曲を歌っていて、曲調にあわせたレトロなヘアスタイルがトレードマークでした。最近はジャズっぽい曲も歌っていて、なんとなくアイルランド版のエイミー・ワインハウスのような印象が私にはあります。
舞台の上には上手にベッド、下手に三枚折りのついたて (この裏で着替えをしたりもします)、中央奥に大きな窓というシンプルなセット。一人芝居ですが、舞台袖に電子ピアノ奏者が控えています。そうなんです、この舞台には歌がふんだんに取り入れられていて、それがイメルダ・メイが起用された理由でもあるのでしょう。歌はオリジナルというよりもダブリンの愛唱歌や誰でも知っているポップスなどです。
舞台は養老院のベッドで寝ているキャスリンの回想から始まります。その後、彼女の若かったころに戻り、そこから徐々に年齢をかさねていくという構成。彼女自身の強烈な生きざまと、反乱、独立、市民戦争という動乱の社会情勢を重ねあわせる形でストーリーが紡がれるわけです。
イメルダ・メイは 2002 年の『Fisherman's Friends: One and All』という映画で役者デビュー。舞台は初めてではないかと思います。自分自身もダブリンの下町育ちという説得力と迫力のある歌声で見ごたえのあるパフォーマンスでした。
