Sudoku はクロスワード・パズルとならんでアイリッシュ・タイムズにも載っているし、アイルランドでも知らない人がいない言葉でしょう。オックスフォード辞書にも掲載されています。
「数独の父」(The godfather of sudoku) とも呼ばれる鍛冶真起さんが亡くなられたという記事が、アイリッシュ・タイムズ紙に掲載されていました (APの配信記事)。それだけ Sudoku はこちらでも人口に膾炙しているということのようです。
数独に似たパズルは以前から存在していて、その原型は19世紀の終わりにフランスで生まれ、1979 年にはナンバープレースっていう名前でアメリカの雑誌に発表されています。それでも欧米に紹介されるにあたって日本語の名前が採用されたのは、ある種のエキゾティック感というか、「日本人はテクノロジーに強い」、「あいつら何か無駄に頭良さそう」っていう、日本人に対するある種のステレオタイプなイメージが人々にアピールしたからかもしれません。また、鍛冶さんが創業したパズル雑誌発行会社のニコリが Sudoku を日本以外では商標登録しなかったというのも拡散につながったでしょうし、クロスワードと違ってコンピューターで作成できるというコスト面での利点もあったようです。
鍛冶さんのように、自分の好きなことを追求して、それで名前を成すことができたというのは凄いことですね。今だと、私はクイズの伊沢拓司さんを思い浮かべます。クイズなんて学問や知力とは関係ないなんていう悪口も聞こえてきますけれども、クイズの楽しさをここまで一般に広め、コンテンツとしての存在感をさらに高めたのは素晴らしいことだと思います。その辺は彼の起業家としての才覚もあると思います。
伊沢さんや彼の出演する『東大王』の新しいところは、クイズの回答者がクイズの説明もするところだと思うんですけれども、イギリスのテレビ番組でもそういうのがあります。私が良く見ている ITV の『ザ・チェイス』という番組。クイズ王に一般視聴者が挑むという形式で、クイズ王が折に触れてクイズの解説をするんですね。番組フォーマットをライセンス契約して日本でも放送すれば受けるのではないかと思いますけど。どうでしょう。
それから、もう1人思い浮かべるのは、大食いチャンピオンの小林尊さん。大食いというと昔はフリーク・ショーのような扱いでしたが、それを一代ジャンルに発展させた功労者の一人。アメリカにわたってテレビの番組は大手企業のCMに出演するまでになりました。
数独の話に戻りますけれど、数独を国際的に有名にしたのはニュージーランド人のウェイン・グールドさん。元々は香港で裁判官をやっていたのですが、数独の問題作成のコンピューター・プログラムを6年かけて作り、イギリスで売り込みをかけたところ、2006年にタイムズ紙に採用されたとのことです。
2009年ごろですが、数独の成功に影響を受けてのことでしょうが、Hitoshii (等しい) という名前のパズル集をコンビニで見かけてびっくりしたことがあります。残念ながらこちらの方はまったく流行りませんでした。
鍛冶さんは生前、「『数独の父』では終わりたくない。日本でパズルというジャンルを確立されたと言われるようになるまで、パズルの楽しさを広めていきたい」と話されていたようですが、志半ばで天国に召されてしまいました。ご冥福をお祈りします。