アイルランド代表としてオリンピックで最も多くのメダルを獲得したのはミシェル・スミス。1996年のアトランタ五輪の水泳競技で金メダルを3つと銅メダルを1つ獲得しました。
オリンピックの中継にあたっては、どこの国でも過去のメダリストを折に触れて紹介すると思います。しかし、RTE ではミシェル・スミスの名前はまったく出てきません。なぜか?
アトランタ五輪の2年後の1998年、ミシェル・スミスはドーピング検査の尿サンプルに故意に異物を混入させたとして、FINAから4年間の資格停止処分を受けました。これにより事実上彼女の選手としてのキャリアには終止符が打たれました。
スミスは選手キャリアを通してドーピング検査で陽性になったことはなく、オリンピックのメダルも剥奪されることはなかったのですが、やはり違反物質を接種していたのではないかという疑いは晴れません。
そもそも、潔白であれば尿に異物を混入させる必要はないわけですし、彼女のコーチについていた元陸上投擲選手のオランダ人、エリック・デ・ブルーンという人が、やはり以前にドーピングにひっかかって資格停止処分を受けていたのです。
また、1992年のアトランタ五輪ではスミスは決勝にも進めない成績であり、その時点で23歳だった彼女が急激に成績を伸ばすことは水泳の世界ではちょっとありえないことだったようです。
私も1996年にはもうアイルランドにいたのですが、既にスミスのドーピングについては取り沙汰されていて、メダルを獲得しても手放しで喜ぶといった感じではなかったと記憶しています。
アイルランド人選手はそれまでドーピングについてはクリーンというイメージがありましたので、スミスが1998年に資格停止処分を受けたのはアイルランド人にとって大きなショックだったと思います。
ただ、スミスを応援する人はいまでもいて、今回 RTE がスミスの名前をあげないことについても苦情が寄せられていたようです。
RTE のラジオ番組にスミスが文書で寄せたステートメントによりますと、今回の五輪で金メダルを獲得したアイルランドのボート選手を褒めたたえるとともに、「アトランタで私が成し遂げたことを今でも誇りに思っている市、アイルランドの人々が今でも応援してくれていることを嬉しく思っています」としています。
ミシェル・スミスさんは引退後に法廷弁護士となり、キルケニー郡のケルズという町で暮らしています。コーチだったデ・ブルーンさんと結婚して、今はミシェル・スミス・デ・ブルーンと名乗っています。
