アイリッシュ・タイムズにもオークションの記事がときどき掲載されます。今回はリーシュ県ダロウにあるシェパードというオークション・ハウスのオークションが特集されていました。ある1人の収集家が40年間にわたって集めたヴィンテージ広告が出品されています。
その中からアイルランドならではの商品の広告をいくつかご紹介します。レトロな雰囲気をご堪能ください。
まずテイトーのクリスマス広告で、ボール紙に印刷されたものです。サンタクロースがテイトー・ポテトチップスの缶を抱えています。昔はこういう缶にパケットを入れて売っていたんですね。「Tayto are Terrific」と書いてあります。1965年のもの。オークション・ハウスが設定するガイド価格は80 – 120 ユーロ。
次はサイドーナの店頭サイン。金属製でおそらく軒下に掲出しておくタイプのものでしょう。サイドーナはアップル・フレーバーのソフトドリンク。アイルランド人なら誰でも知っているが、アイルランドの外の人はほとんど誰も知らないというブランドです。元々はサイダーのブルマーズの製造で有名なC&Cが1952年に販売を開始したものですが、C&Cがソフトドリンク部門を売却したため、現在はブリトヴィック社の商品となっています。ガイド価格は80 – 120 ユーロ。
続きまして、エアリンガスの1962年のポスター。七面鳥をプレゼントとして航空便でイギリスに送りましょう、というポスター。当時は年に一度、クリスマスの時期に飛行機で七面鳥をイギリスに送っていたとか。1週間がかりの事業だったようです (たぶん準備も含めて)。アイリッシュ・タイムズによりますと、当時はカハル・ブルー通り (Cathal Brugha Street, D1) に専門の倉庫が設けられていたそうです。ガイド価格は 300 – 500 ユーロ。
こちらは、ボード・ナ・モナのブリスケットのポスター。ボード・ナ・モナ (Bord na Móna) は日本語にすると泥炭庁。泥炭 (ピートとかターフとかとも呼ばれます) の利用を管理する半官半民の組織です。ブリスケット (Briquette) というのは辞書を引くと「成形木炭」と出ていますが、ここでは成形泥炭ということになります。ちなみに、泥炭はCO2の排出量が大きいということで最近やり玉にあげられてまして、2024年には泥炭のブリスケットの販売は終了するそうです。
アイルランド語の組織名、アイルランドならではの商品、そしてデザインもかっこいいです。ガイド価格は150 – 250 ユーロ。
次はアイリッシュ・スウィープステークのポスターです。アイリッシュ・スウィープステークはアイルランドで以前行われていた宝くじなんですが、病院建設を目的としたチャリティーのように宣伝しながらも、実は民間人の主催者が私腹を肥やすためにやっていたという詐欺まがいのスキームでした。そういうダークな部分も含めて私は大好きです。以前、このブログにも記事を書きました。
上のポスターには看護師が当選番号を掲げている絵が描かれていますが、医療関係者に抽選を手伝ってもらうことで、慈善活動のイメージを印象付けるという演出なんですね。看護師さんの後ろに描かれている円柱型の器具は抽選機だと思います。こちらのガイド価格は200 – 300 ユーロ。
下側の3枚のポスターもドリーミーな絵柄がいいですね。こちらは3枚まとめてガイド価格が 100 – 150 ユーロ。
最後は An Tóstal のポスターです。ガイド価格は150 – 250 ユーロ。実はAn Tóstal って初めて聞いたんですが、1950年代にアイルランド各地で数回開かれたフェスティバルです。An Tóstal は日本語で言うと「集い」。アイルランドの暮らし/生き方を祝福するイベントだったそうです。アイルランドの観光庁が音頭を取って、海外で暮らすアイルランド移民を観光客として呼び込む目論見があったみたいです。
現在でも1か所だけ An Tóstal のイベントを続けているところがあって、それはリートリム県のドラムシャンボ (Drumshanbo) という町。1週間の開催期間中は、音楽、釣りとアートのワークショップ、詩の朗読、テーブルクイズなどが行われているそうです。
An Tóstal 自体はほぼ消えてしまったわけですが、ここからスピンオフした有名イベントもあります。1つはローズ・オブ・トラリー。もう1つがタイディ・タウン・コンペティション。2つともアイルランド人なら知らない人のいない大イベントです。An Tóstal を開催するにあたって町を綺麗にしなくちゃねっということで大掃除をしていたそうなのですが、そこからタイディ・タウン・コンペティションは生まれました。
オークションは 6 月 10 - 11 日に開催されます。