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北アイルランドの暴動

 

 

ここ1週間ぐらいですが、北アイルランドの複数の場所で暴動が起きています。

 

まず、3月31日にデリーのウォーターサイドというプロテスタントの地区で発生。4月2日に南ベルファストに飛び火。3日にはベルファスト北部のニュータウンズアビーにも広がりました。4日にはベルファストから11キロほどの距離にあるキャリックファーガスでも暴動が発生します。

 

また、5日には、ポータダウン、バリメナ、マーケットヒルにおいて、無許可のパレードが行われました。一部の参加者はマスク (おそらく目出し帽のようなもの) を被っていたそうです。

 

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ベルファストのサンディ・ロー (Sandy Row) エリアに掲げられたアイリッシュ海のボーダーに反対するバナー Photo by Whiteabbey

 

ブレグジットに関してプロテストタント住民の間にフラストレーションがたまっており、それがここにきて爆発したというのが背景のようです。

 

イギリスが EU から脱退したことにより、北アイルランドアイルランド共和国の間の国境をどうするかというのがずっと懸案になっていました。人やモノの移動に大きな支障が出るので、税関や検問所などを設けたくない、というのが第一の優先事項でした。その結果、関税については北アイルランドがUKとEUの間の緩衝地帯のような扱いとなりました。これは、ブリテン島とアイルランド島の間のアイリッシュ海にボーダーができることを意味します。モノがアイリッシュ海を渡るときに関税のチェックを受けるわけですから。

 

北アイルランドはUKと一体であることを望むプロテスタント系の人々にとって、これは看過できることではありません。プロテスタントの人は、ブレグジット国民投票では離脱に賛成した人が多かったので、裏切られたと感じる人も多いのでしょう。

 

また、もうひとつの要因としては、昨年の6月にロバート・ストーリー (Robert Storey) というIRAの幹部だった人が亡くなり、葬儀が行われました。これに、支援者やシンフェインの人たちがたくさん集まったのですが、これは明らかにロックダウンのガイドライン違反だったわけです。ところが、3月の末に、ガイドラインを破った24人のシンフェインの政治家を訴追しないという決定がなされました。暴動はこれが1つのきっかけになったと思われます。

 

今回の暴動は、各地で行われている反ロックダウンのデモとは直接関係ありませんが、長期にわたるロックダウンで溜まったうっぷんを晴らす絶好の機会を提供したという側面もあるかもしれません。

 

北アイルランド(プロテストタント側もカトリック側も)、アイルランド共和国、UKの政治的リーダーは暴動を非難して、暴動に参加しないように呼び掛けていますが、現場レベルの DUP (北アイルランドの第一党・プロテスタント系の) 組織が頭に血がのぼっている状態かもしれません。

 

話は変わりますが、昨日、ツイッターに流れてきた写真です。

 

 

 

北アイルランドは至る所に壁画が描かれているので有名ですが、最新の壁画が完成したことをアーチストの方が投稿していました。

 

夜の新宿・歌舞伎町を思わせるような場所を、イギリス特有の黒いタクシーが走る絵です。これはかっこいい。

 

北アイルランドの壁画はやはり政治的なものが多いのですが、今回のダン・キッチナーさんの作品は政治とはまったくありません。北アイルランドといえば「紛争」のことが真っ先に頭に浮かぶ人が今でも多いと思うのですが、「いや、そうではないんだ。私たちは新しいステージに進んでいるんだ」というのが、このまったく政治的でない壁画の政治的なステートメントなのかもしれません。

 

場所は西ベルファスト・シャンキル・ロードの近くのエンフィールド・ストリート (Enfield Street) です。

 

www.belfastlive.co.uk

 

2021/4/10追記:

グーグルマップで調べましたが、壁画の書かれた壁はもともとはこんな感じ↓。エンフィールド・ストリートはごくごく普通の住宅地です。

 

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