内閣府が4月9日に新型コロナウイルス感染予防の啓発動画を公開しました。いわゆる「3つの密を避けましょう」という呼びかけです。
動画は若者のグループが3密の揃った場所でお酒を飲んでいる、という設定になっています。
#新型コロナウイルス の集団発生防止のため、3つの「密」を避けましょう。
— 内閣府政府広報オンライン (@gov_online) 2020年4月9日
(1)換気の悪い密閉空間
(2)多数が集まる密集場所
(3)間近で会話や発声をする密接場面https://t.co/kiiO632JQU pic.twitter.com/mLOv5Afzvo
まあ、皆さん忙しい中で一生懸命やってらっしゃると思うんで、あんまり細かいことは言いたくないですけど、私はこの動画を見てちょっと違和感を持ちました。登場するのが若者しかいないからです。そして、登場人物があまり尊厳のある描き方をされていないからです。
統計を見てみると、感染者に若い人が特に多いということはありません。次のグラフは厚生労働省のサイトにあったグラフです。20代から60代まで、現役世代はほぼ同じぐらいの感染者数です(60代は少し低いが、60代後半になれば引退している人も多いだろうし)。
もちろん、慶応大学病院の研修医の打ち上げで感染者が発生したことはありましたが(研修医だから若い方でしょう)、兵庫では警察署長の歓迎会で感染が拡大していますし、和歌山では中学校の歓送迎会がクラスタとなった可能性があるとされています。
また、3密が発生するのは酒の席だけではなく、愛知県では剣道の訓練で集団感染が発生していますし、3密のメッセージを出すのに「若者」の「飲み会」だけを例にとりあげるのはふさわしくないと思います。
もちろん、お酒を飲むこと自体が悪いわけではありません。でも、登場人物の言動が野卑な印象を与えるように作られているのですよね。もう少し普通にお酒を楽しんでいる描写でよかったと思います。感染者にスティグマ(負の烙印)を与えないということを考慮してですね。
なんか、文句の出にくいところを選んで悪者にしたという印象です。
では、ちょっとここで、イスラエル政府のコロナ感染予防啓発動画を見てみましょう。
「見た目的に防御できてそうなマスクを付けてるから安心」でも「空気中にウィルスが充満してそうで呼吸も不安」でもなく、とにかく「何かを触る手の動きのリレーが繰り返されて拡がるんですよー」ってのがよく伝わるイスラエルの公報動画。pic.twitter.com/Z3tG5xGn4D
— ブルボンヌ (@bourbonne_campy) 2020年4月6日
性別や年齢の違う人々が普通に仕事する中で感染したり、感染させたりということが描かれてます。誰も悪者になっていません。
それから、次はテーマがちょっと違うんですが、アイルランド政府が作ったセクハラ防止啓発動画です。
こちらは、いろんなセクハラのシチュエーションを描いているもので、シーンごとに被害者と加害者がいるわけですが、年上の女性上司からのセクハラを取り上げるなど、特定の性別や年齢層に負のステレオタイプが生まれないように配慮していると思います。
上で紹介した日本の動画も、政府の広報である以上、そういった配慮はあってしかるべきだったと思います。
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さて話は変わりますが、金曜の昨日(4月10日)、アイルランドにおける外出制限令の3週間の延長がレオ・バラッカー首相より発表されました。5月5日までは、強制力を伴った外出制限令が継続されます。
昨日、オコネル・ストリートのあたりを散歩していたんですが、ダブリンにお住まいの方ならこのドーナツ・ショップ、ご存じですよね。
この店は私がアイルランドに来た頃には既にありましたから、少なくとも30年近くは営業を続けている店です。コロナウイルスの影響で現在は営業を一時停止しています。
営業を停止している飲食店のドアにはだいたい張り紙がしてあって、「パンデミックの影響により、政府のガイドラインに従い、追って通知があるまで休業いたします」なんて書いてあるわけです。
ところが、このドーナツ・ショップの張り紙はこれ。
「5分で戻ります」。これ、ワンオペの店のスタッフがトイレに行くときに張っとくやつでしょ(笑)。しかし、ポジティブなヴァイブを感じますね。