バリジェームズダフ (Ballyjamesduff) に行くまで知らなかったのですが、キャヴァン・カウンティ博物館 (Cavan County Museum) は県都のキャヴァン・タウンではなくバリジェームズダフにあるのでした。ここがまた力の入った展示内容でした。
博物館になっている建物は1872年に建てられたもので、もともとはプア・プレア・シスターズ (Poor Clare Sisters) の女子修道院でした。ここが博物館に生まれ変わったのは1996年です。
展示は3階建ての建物の中だけでなく、屋外にもあります。屋外展示物のテーマは2つ。まず1910年代の独立の機運が高まっていたころのアイルランドの歴史です。ダブリンの GPO のレプリカが設置されており、その奥では当時の生活の様子が再現され、独立の志士たちが紹介されています。
野外のテーマの2つ目は、第一次世界大戦、特に激戦地であったソンムの戦いです。第一次世界大戦には、かなりの数のキャヴァン県出身者も英軍の兵士として参加していました。キャヴァン県出身の兵士の個人的なストーリーをパネル展示しているほか、塹壕を再現しているんですね。野外の塹壕展示としてはイギリス・アイルランドで最大のものだそうです。残念ながら10月1日からメンテナンスのため閉鎖されていて私は中に入れませんでしたが。野外の展示のテーマは2つあわせて「平和」ということかもしれません。
館内の展示に目を移しますと、私がもっとも興味をひかれたのはシーラ・ナ・ギグ (Sheela na Gig) です。私は実は実物を見たのは初めてだと思います。これは裸の女性が自分の女性器を両手で広げている像です。こうした像や絵はヨーロッパ全域でみられるそうですが、多いのはアイルランド、イギリス、フランス、スペインで、最も多く見つかっているのがアイルランドだそうです。シーラ・ナ・ギグというのはアイルランド語が元になっているのはまちがいないようですが、語源については学者の間でも意見の一致はみられていません。
シーラ・ナ・ギグはキリスト教初期の時代から作られはじめ、11世紀から15世紀の間に急速に広まりましたが、17世紀の宗教改革を境にぱったりと作られなくなりました。厄除けのためであるとも、性欲に対する戒めであるとも、子孫繁栄を祈願するためのものであるとも言われます。キリスト教以前の多神教の時代の名残として女神が描かれているのだという説もあります。また近年のフェミニストの中には、女性のエンパワーメントの象徴としてポジティブに捕える動きもあります。このあたりはアーチストのろくでなしこさんなんかにも通じることかと思います。
次はコーレック・ヘッド (Corleck Head) と呼ばれる3つの顔が刻まれた丸い石。紀元前100年ごろの鉄器時代のもの。1855年頃にキャヴァン県ドラミーグ (Drumeague) のコーレック・ヒルで地元の農夫によって見つけられました。キリスト教時代に入って多神教時代のアイコンを破壊して隠していたものが発掘されたのではないかと言われています。これはケルト多神教アートで最も有名で特徴的なものの1つだそうです。3つの顔は現在・過去・未来を表しており、全体としてすべてを見通す全知全能の神を表現しているのではないかという説もあります。表情は微妙に違うのですが、3つとも仏様を思わせるような柔和な感をしていますね。
続きましてはキリクラギン・ストーン (Killycluggin Stone) です。こちらは人の顔や姿が描かれているわけではないので私のような素人にはピンとこないのですが、こちらもケルティック文化の重要な遺物だそうです。この石は、キャヴァン県のキリクラギンで1921年に見つかったもので、鉄器時代のラ・テーヌ文化の装飾が施されています。キリスト教伝来前のアイルランドの神クロム・クルアハを表しているのではないかという説があります。
カウンティ博物館にいくと必ずスポーツ、特にGAAのコーナーがあります。こちらの博物館でも部屋を3つくらい使って展示していました。こちらは昔のカモギーのユニホーム。
パーシー・フレンチの部屋もありました。
そのほかにも、キャヴァンの領主だったファーナム男爵 (Baron Farnham)、社会で活躍した女性の特集、海外へ移民した人々の個人的なストーリー、キャヴァンの歴史を文ドルさまざまな出来事 (ベンバーブの戦い、1641年の反乱、飢饉など) についての展示があります。ほんとうに盛沢山です。
入場料は通常6ユーロですが、この日はなぜか無料デーだったのでラッキーでした。日曜と月曜はお休みです。公式ホームページはこちら。