カーロー・カウンティ博物館は1973年のオープンですが、2012年に現在の元女子修道院の建物に移ってきました。ツーリスト・オフィスが併設されています。カーローの町の中心には Cultural Quarter (文教地区) というエリアがありまして、大学、図書館、美術館/劇場などが集まっています。そこに最後にオープンした文化施設がこの博物館となります。カーロー・タウンとカーロー県の役所が運営にあたっています。
3つの階に展示は分かれているんですが、1階は主にカーローの産業についてです。私が一番興味を惹かれたのは砂糖工場の物語です。カーローの町に砂糖工場ができたのは1926年のこと。アイルランドは自由国として船出したばかりで、新しい産業を興し、雇用を増やし、必需品の自給を高める必要がありました。砂糖工場の建設にカーローが選ばれたのは、原料のテンサイ (Sugar Beet) の栽培地として適していたからです。もともとこのあたりは農耕が盛んな土地でした。たとえば、今でもカーロー県民の愛称の1つに Scallion Eaters というのがあるのでえすが、これはこのあたりがブリテン諸島でも有数のネギ栽培地だったことにちなみます。工場の運営は入札によりベルギーの会社にきまりました。これに先立ち、農民を説得して5000エーカーの土地がテンサイの栽培にあてられることになりました。
1933年にこの会社は国営化され、コークのマロー (Mallow)、ティペラリーのサールズ (Thurles)、ゴルウェーのチュアム (Tuam) にも工場が作られました。製品は今でもお馴染みの Siucra というブランドで販売されました。1991年に会社は再び民営となり、Greencore という名前で生まれ変わります。カーローの工場はEUの砂糖政策に関する改革を受けて 2005年に閉鎖されます。これが大きなニュースになったのは私も覚えています。Greencore は現在はマローの砂糖工場を操業しているほか、さまざまな食料品を製造販売しており、サンドイッチの生産では世界一だそうです。
2階の展示で圧巻だったのは下の写真の説教壇です。ブルージュの職人が樫の木を彫って作り上げたもので、1899年にカーロー大聖堂でお披露目されました。1895年に亡くなったキルデア&ラクリン (Leighlin) 司教補のマイケル・カマフォード (Michael Comerford) 神父に捧げられたものです。コーク県のヨール (Youghal) でステンドグラスと金属細工の事業を営んでいたティペラリー出身のマイケル・バックリーにより設計されました。高さ約6メートル。これほどまでに細密で豪奢な装飾が施された説教壇を私は間近で見たことがありません。
ほかにもカウンティ博物館には欠かせない GAA のコーナーもありましたし、カーロー出身の有名人のコーナーもありました。今や大女優のシアーシャ・ローナン (Saoirse Ronan)もカーローの出身なんですよね。生まれはニューヨークなんですが、3歳のときからカーロー県のアーダティン (Ardattin) という村に戻ってきて、そこで育っています。
入場無料。公式サイトはこちら。
参考資料
RTÉ Archives | Work | Carlow Sugar Factory Closure