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憲法改正案は2つとも否決

前回のブログ記事で問題なく改正案がとおりそうなどと書いてしまいましたが、憲法修正法案は2つとも大差で否決されてしまいました。2月中旬の世論調査ではYes派がパーセンテージで30ポイント以上リード、3月初頭でも15ポイント以上リードしていたのに、最後にNo派がまくった形になりました。Yes派がリードしていたとはいえ、投票日が近づくにつれてまだ態度を決めていないという有権者の数は増えていたようです。

 

今回の改正を推進した与党の敗因は準備不足です。新しい条文の文言はあまり練られておらず、議論も深まらず、キャンペーンも拙速で国民を説得できませんでした。その原因の1つは3月8日の国際女性デーに投票を行うことにこだわってしまったこと。それに間に合わせようと段取りが駆け足になってしまいました。

 

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2015年の同性婚、2018年の中絶の国民投票ではYes派が勝利し、宗教のくびきを振り払って国全体がユーフォリアに包まれ、アイルランドのリベラルで世俗的な変化を海外にアピールできたわけですが、今回も同様の効果を狙ったのでしょうか。国際女性デーに投票日をあわせて話題作りするという政治的下心が裏目に出たようです。

 

では憲法の何をどう変えようとしたのか。まず「家族」に関する修正案では、婚姻だけでなく「永続的な関係(Durable Relationship)」に基づくものも家族と認めることにしようとしました。

 

 

もう1つは「女性とケア」に関する修正案(ケアは介護だけでなく子供を育てることも含む)で、こちらは「女性はその家庭生活において、それなしでは公益を達成できない支援を国に与える」と「母親が経済的必要性から家庭での義務をおろそかにして労働に従事しなくていいように国は努力する」という文言を削除して「家族はその絆によって互いにケアを提供し、国は社会に対して支援を提供する」を挿入しようとしました。たしかに女性に関する現在の条文はNo派も認める古臭さです。

 

 

ではNo派の反対理由とはどういうものだったのでしょうか。「家族」修正案の方では、「Durable Relationship」の定義がわからない。たとえば、3人以上の「持続的な関係」も家族として認められるのか? など。また「持続的な関係」が国外退去の口実に使われるのではないかという懸念も表明された。これは別に極右団体の主張ではなくて、元司法長官のマイケル・マクダウエルが指摘した。この人は今回のNo/Noキャンペーンの成功に大きく貢献した1人。移民はアイルランドでもホットな話題です。 

 

www.irishtimes.com

 

「女性とケア」の方では、家庭だけでなくコミュニティ内のケアも書き込むべきだ、ケアに関する新しい条文は健常者の視点からのみ書かれている(障害を持つ人が望むのは支援というより自立した生活を送ることと平等である)などの反対意見がありました。

 

フェミニスト系団体の意見も分かれました。アンブレラ団体であるアイルランド全国女性委員会はYes/Yesを表明しましたが、反対する団体もちらほら。女性とケアを同じ法案にまとめたことへの不満を表明する議員も。女性に関する話だけならおそらくYesが通ったでしょうから。

 

アイルランド憲法改正案が提出されるのは、1937年の制定以来、今回ので39件目と40件目。今回で12件目と13件目の否決。「ケア」のNo票73.93%は過去最高。「家族」のNo票67.69%は過去3番目の高さです。全国の39の選挙区のうち「ケア」の方はすべての選挙区でNoが勝利。「家族」の方は1つ (ダンレアリ) を除いて No の勝利でした。

 

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