たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

賃貸世代 (Generation Rent)

 

 

アイルランドは持ち家志向が強くて、人生設計は家を買うことを前提として組み立てるという感じです。日本と違って年数が経っても家やアパートの値段が下がらない、というより上がることの方が多いので、賃貸が得か、所有が得か、みたいな議論も起きません。財産として子供に残すこともできますし。

 

今日のアイリッシュ・タイムズに載っていた記事ですけれども、不動産の価格が高くなりすぎて若い世代が購入できないし、賃貸料も高くて引退後は大変になるかも、というお話です。

 

www.irishtimes.com

 

昔は、職を得て、頭金のためにお金を貯め、家を買ってローンを支払い、引退する頃にはローンが終わるので生活費があまりかからなくなる、という人生設計でした。

 

しかし、現在は、家を購入するのは非常に難しくなり、年金も十分ではありません。

 

今、20代30代の人は「Generation Rent」(賃貸世代) などと呼ばれているそうです。家を購入できないまま引退を迎え、収入が激減して貧困やホームレスのリスクがあると懸念されています。

 

家を持っている利点はいくつもあります。家賃を払わなくていいだけでなく、部屋を人に貸すこともできますし、ライフタイム・ローンで家を担保にしてお金を借りることもできますし、小さな家に買い替えて差額を手に入れることもできます。

 

ある資産によりますと、年金で生活するには年に12,400ユーロが必要とされています。これには4週間の夏のホリデーの費用が含まれていますが、家賃は含まれていません。

 

アイルランドの最近の持ち家率は68%で、これは2004年の82%から大きくダウンしています。持ち家率は1940年代以来下がり続けているのですが、今日の「賃貸世代」ほど不動産市場から締め出されている世代はありません。

 

f:id:tarafuku10:20210706001145p:plain

 

ある調査によりますと、現在の20代30代は、親の世代よりも裕福でなくなる最初の世代となるようです。その大きな要因が持ち家率の低下です。

 

1960年代生まれの人は30歳のときに約61%が家を持っていましたが、1980年代生まれのそれは32%に過ぎません。40歳が分水嶺で、家を持つ人のほとんどが40歳までに購入を済ませるそうです。現在40歳の人で家を持っているのは61%。50年代60年代生まれの80%から大きく低下しています。

 

2916年の調べで40歳以上の人で家を借りているのは100,000人。2011年より20%増えています。Aloneという一人暮らしの高齢者向けの福祉団体は、60歳以上の独居者は2026年には358,001人、2031年には406,963人になると予測しています。

 

ある調査によると、50%を超える人が収入の30%以上を家賃に充てており、12%の人は40~50%を家賃に充てているそうです。

 

年金も持ち家を前提に組み立てられているので、借家の人には足りないようです。あるファイナンシャル・アドバイザーの話では、プライベート・ペンションが平均的な人で年に約4000ユーロ。国の年金が12911ユーロ。持ち家ならばなんとかなるけど、ダブリンとかで家を借りていると足りない。いまダブリンは1ベッドのアパートで月1000ユーロはゆうに超えますから。そうすると、多くの人が収入(年金)の80%を家賃に持っていかれることになるというのです。

 

いちおう国からの補助もあるにはあります。まず、ソーシャル・ハウジング。日本でいう公営住宅みたいなものでしょうか。既には入れている人はラッキーです。まだの人は長い待ち行列に並ばないといけません。

 

HAP (Housing Assistance Payment)という低所得者向け家賃補助の仕組みもあるのですが、ダブリンでは月に最大660ユーロの家賃補助が得られるのですが、ダブリンでこの金額で家を借りることは非常に難しい。はみ出た分は自分で払わないといけません。

 

解決策ですが、1つは国の支援の拡大。また、引退の年齢を引き上げること。住宅ローンはだいたい引退時 (だいたい65歳)までに払い終わるようにしか組めないのですが、これだと45歳の人は20年ローンしか組めなくなります。65歳になっても引退しなくてよくて、収入が下がらないのであれば、ローンは組みやすくなります。

 

f:id:tarafuku10:20210706001002p:plain

 

また、中央銀行の規制を代えるのも1つの案。リーマン・ショックのときにローンの規制をきつくしたんですよね。もっと借りやすくしてはどうかと。ローンで払う額の2倍の家賃を払わないといけないようなシステムはおかしい、ということです。

 

また、年金に自動登録して結果的に年金額が増えるようにするというのも1つの案。

 

さらに、都市に住んでいるのなら田舎に引っ越して家賃を下げるという手もありますが、年を取ってから住む場所を変えるのはけっこうつらいらしいです。

 

 

 

 

 

 

 

アイルランド情報 人気ブログランキング - 海外生活ブログ