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ライフタイム・ローンとは何か?

 

ライフタイム・ローン (Lifetime Loan) またはライフタイム・モーゲージ (Lifetime Mortgage) というのは高齢者向けのローンで、自分の持ち家を担保にしてお金を借り、自分が死んだとき、または自分が転居したとき (多くの場合、長期介護施設への転居)、家を売ってそのお金で一括してローンを金利と共に返すという金融商品です。月々の返済などもありません。

 

アイルランドでは、この種類の商品を提供していた会社が2012年以降なかったのですが、最近またスプライ・ファイナンス (Spry Finance) という会社が提供を始めたということで、アイリッシュタイムズ紙に記事が出ていました。ちなみに、spry というのは (年配者が) 元気な、ピンピンして、という意味の形容詞です。

 

www.irishtimes.com

 

このローンの第一の利点は、ローンを借りても家の権利は自分 (お金を借りた人) が保持したままになるということ。つまり、立ち退きを要求される心配はまったくないということです。

 

このローンを借りるには、いくつか条件を満たす必要があります。まず、60歳以上であること。アイルランド共和国内に家を持っていること。家の評価額が、ダブリンの場合は25万ユーロ以上、ダブリン以外の場合は17.5万ユーロ以上であること。基本的にはローンを払い終わっていること。自宅であること (別荘や投資目的で人に貸している不動産はダメ)。

 

借りる理由ですが、スプライ・ファイナンス社によりますと、一番多いのは、まとまったお金を借りて家の改装に使いたいという理由だそうです。少額の負債を返済してキャッシュフローを改善するためとか、医療などでまとまったお金が必要とかいう理由で借りる人もいます。さらに、遺産を子供たちに早めに渡したいときにも使えます。そして、このローンを使う理由は、やはり何と言っても家を明け渡さなくていいからです。

 

スプライ・ファイナンス社は、このローンを借りる際にはいろいろと考慮すべき点もあると警告しています。まず、遺産にかかわる問題ですから子供たちにも相談すること。親がローンの内容をちゃんと理解しているか、子供たちにチェックしてもらうという意味もあります。また、金銭的な必要性がない場合はこのローンはお薦めしないそうです。必要性がある場合でも、他のオプションの検討も忘れずに。また、同社では、子供たちが親に無理やり金を借りさせようとしていないか、チェックもしているようです。

 

借りられるお金の額は、2万ユーロから50万ユーロまで。これは、年齢と家の価格によって決まります。多くの人は5~8万ユーロを借りるそうです。たとえば、60歳の人は家の価格の15%まで、85歳の人は40%まで借りられます。ご夫婦で申し込む場合は、若い方の年齢が基準になります。

 

スプライ・ファイナンス社のライフタイム・ローンの利率は5.5%。現在の状況を考えると、この金利は高く感じられますが、他のローンと違い、貸し手はいつお金を回収できるか予測できないわけなので、他のローンと同じような利率にするわけにはいかないということらしいです。

 

月々の返済はなく、金利複利ですから、コストのかかる金融商品だということは間違いないようです。金利が5.5%の場合、負債額は13年で約2倍になります。長生きしすぎると負債額が家の価格を上回ってしまったらどうなるの、と心配してしまいますが、追加で支払わされたり、家を追い出されたりすることは絶対にないという保証が契約に入っているので大丈夫だそうです。そのへんはスプライ・ファイナンス社が保険でなんとかするんでしょう。

 

ローンのコストを下げたい場合は、ローンの開始から10年以降であれば、元金の10%までを違約金なしで返済できるそうです。それ以上を返済する場合は、ある程度の違約金が発生するということなんでしょうね。また、スプライ・ファイナンス社の場合、ローンを借りた人の死亡後、1年以内に家を売って返済すればいいそうです。

 

他の金融商品との兼ね合いも考える必要があります。たとえば、国の保健機関である HSE は、フェア・ディール (Fair Deal) というスキームを用意しています。これは、長期介護施設の入居に必要になる費用を、不動産を担保にして借りるというもの。こちらも、亡くなったときに家を売って一括返済するタイプのものです。HSEによりますと、ライフタイム・ローンを借りても、フェア・ディールに申し込みできなくなるわけでは必ずしもないそうです。ただし、ライフタイム・ローンの分を差し引いた後も、家の価格の22.5% の価値が残っていることが条件だとか。

 

また、たとえば夫がフェア・ディールを利用して介護施設に入った場合、妻はライフタイム・ローンに申し込むことができなくなる可能性が高いそうです。

 

アイルランドの場合は、不動産は株と同じように価格は上下するものの、基本的には上がるものと考えられています。事情の違う日本では、ライフタイム・ローンは商品として成立しにくいかもしれませんね。

 

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