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映画『Sing Your Song』 ハリー・ベラフォンテ物語

 
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ハリー・ベラフォンテ物語という副題は私が勝手につけましたが、『Sing Your Song』という映画を見ました。ハリー・ベラフォンテのインタビューを元に、彼の生涯をつづるドキュメンタリー映画です。
 
ベラフォンテと言えば「デーヨ、デエエヨ」の「バナナボート」です。日本でのカバー・バージョンのせいかもしれませんが、この曲はユーモラスな歌のイメージが強くて、私はベラフォンテもオモシロ黒人枠の人かと漠然と思っていました。
 
しかし、これはとんでもない間違いでありました。
 
ベラフォンテはマルティニク人のお父さんとジャマイカ人のお母さんの間に 1927 年にニューヨークで生まれました。
 
もともとは、シドニー・ポアチエ、マーロン・ブランド、トニー・カーティスなんかと演劇をやっていたのですが、プロのエンタテナーとしてのキャリアはクラブ歌手として始めました。
 
スタンダードナンバーなんかを歌わされて「タリぃなあー (`~´)タリー」などと思っていたところ、フォークソングをレパートリーとする黒人ミュージシャン (Lead Belly) を知って「これだ」と思い、米国議会図書館に通ってカリブの民謡を集め始めました。そして、言わば島唄歌手としてレコード・デビューすることになります。
 
「バナナボート」もジャマイカの労働歌を元にしたものなので、明るく陽気な黒人というステレオタイプに便乗したノベルティ・ソングではまったくないわけですね。どうもすみません。
 
その後、ベラフォンテは自分の名前を冠したテレビ番組でエミー賞を取ったり、ハリウッド映画に主演したりして、スター街道を突っ走るわけですが、50 年代、60 年代ですから、白人ミュージシャンと一緒にラスベガスに公演にいっても、同じホテルに泊まれない、プールには入れない、みたいな状況なわけです。
 
そういうことからか、ベラフォンテは公民権運動にのめり込みます。キング牧師と親交を深め、FBI のブラックリストに載り、映画『ミシシッピバーニング』の題材となった公民権運動家殺害事件の現場に赴こうとして差別主義者に付け回されたりします。っていうか、キング牧師に金銭的な援助をしてたのはベラフォンテだったんですね。このあたりはまさにアメリカの歴史の生き証人といった形です。
 
その後、エチオピアの飢饉の惨状に衝撃を受けて、「We Are the World」のプロジェクトを
立ち上げたのも彼です。私はなんとなくクインシー・ジョーンズが中心になってやったのかと思っていましたが。
 
ベラフォンテはもう 80 歳をゆうに超えているんですが、インタビューを見ててもまったく年を感じさせません。今でも若い人をサポートするためのチャリティをやっているようです。
 
この映画は、娘のジーナがプロデューサーに名を連ねているし、基本的にベラフォンテの発言には何の検証も加えられていないので、90 分余りにわたってベラフォンテの PR 映画を見せられた感がしなくもないんですが、それにしても 1 人のミュージシャンの激動の人生を縦糸にして、普段はあまり光のあたらない角度からアメリカ社会をじっくりと見せてくれます。単なるインタビュー映画に留まらない意欲作だと思いました。
 
 

Harry Belafonte - Island In The Sun
(「バナナボート」はあんまりいい映像がYoutubeになかったので、50年代の彼のヒット曲のひとつ『Island in the Sun』です)
 
Sing Your Song
2011 年アメリカ映画
監督: Susanne Rostock
出演: Harry Belafonte