たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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アイルランドの電力事情 (1/2)

原発の事故でアイルランドの電力事情に興味が出たので調べてみました。

 

私は電気代をボード・ガシュ (Bord Gais) っていう会社に払っています。名前からもおわかりのように、この会社は主に都市ガスを供給する会社です (Gais はアイルランド語でガス)。

 

去年あたりから、ボード・ガシュが「ウチに切り替えてください」っていうテレビ・コマーシャルをがんがん流してたんですが、私は単に電気からガスに切り替えてくださいっていう宣伝かと思ってました。

 

ところが、ある日、ボード・ガシュの営業の人が私の家を訪ねてきました。デクランって名前の人だったんですが、「電気代安くなるからウチに切り替えてよ」って言うのです。私の家はアパートでガスの配管はありません。アイルランドだとアパートはまずオール電化だし、一軒家でもガス使ってないところの方が多いと思います。

 

で、私がびっくりして、「え、電気も売ってんの?」と聞くと「電気売ってる」と。「ESB より安くなるの?」と聞くと「安くなる」と。こだまでしょうか。いいえ、ボード・ガシュです。

 

それで、その場で契約したんですけど、それまで私はずっと ESB (Electricity Supply Board) っていうところと契約していました。

 

以前は ESB がアイルランドの発電・送電・供給を一手に引き受けていました。独占企業だったわけです。たとえば、東京に住んでると、東京電力が発電・送電・供給を全部やってて、消費者はそこと契約するしかないわけですが、そんな感じだったわけです。

 

ところが 2000 年の EU 指令を受けて、アイルランドも電力の自由化を進めることになりました。業務用の電力の自由化はけっこうすぐに行われたらしいんだけど、一般家庭が電力供給会社を選べるようになったのはここ数年のこと。ちなみに、ガス市場も自由化されたので、ボード・ガシュが独占していた市場に、今は逆に ESB なんかが参入してます。

 

アイルランドには現在、発電事業者が ESB をはじめ 7 社ぐらいあります。これらの会社が生み出した電気はすべて EirGrid っていう政府所有の会社にいったん納入されます。EirGrid は供給事業者に電気を売って、供給事業者が契約ユーザーに提供する。供給事業者は、ESB、ボード・ガシュ、エアトリシティっていう 3 社があって、消費者は自由に選ぶことができます。

 

物理的な電力供給網を所有しているのは ESB ですが、この所有権を EirGrid に移そうという動きもある。今はたぶん、EirGrid が使用料を ESB に払ってる形になるのかな。

 

日本も、もうちょっと自由化を促進した方がいいですよね。電力会社は抵抗するだろうけど。

 

イメージ 1

(ダブリンの象徴的な建造物のひとつ、Poolbeg 発電所の煙突)



余談です。
Wikipedia の「電力自由化」の記事の「日本の事情」の節におもしろいことがいっぱい書いてある。Wikipedia だから話半分くらいに聞いてくださいね。

 

==引用ここから==
当初は安い電力供給の形態を模索し、アメリカ合衆国など諸外国に倣い始まった日本の規制緩和であるが、早々に諸問題に直面することとなった。

 

新規事業者が発電事業を立ち上げても、送電は既存の電力会社の送電線を借用せねばならず、価格決定権を得ることが出来ない脆弱なビジネスモデルにしかならない現実がある。このため、新規参入業者のビジネスは、大規模な工場など極めて限定的な地域にとどまっている。また、2000年代後半に入ってからの原油価格高騰の影響を受けて、火力電源が中心の新規参入業者は高コストを強いられているとされる。これらの状況から、日本では、自由化の進展は極めて厳しいという見方をする者もいる。しかしながら、2006年2月16日付『日経産業新聞』によると、これまでに東京電力は1,100件(220万kW)、関西電力は270件(58万kW)、新規事業者に顧客を奪われ新規事業者は確実に顧客を掴みつつあり、既存会社は危機感を募らせ、電力自由化を阻止しようと政治力を行使している。

 

電力会社出身の国会議員は与野党ともに多い。彼らは、電力業界関連の政策を決定する与党部会の幹部となり、電力会社にとって都合のよい規制を誘導している。特に自由化に際しては、政治に働きかけて競争を抑え、経営の非効率が表にでることをできるだけ避けようとしてきた。このような政治力の行使は、独占とその非効率性の温存に役立っている。[要出典]

 

また、電力会社は、新聞記者出身の評論家達に研究資金を配布して、新聞記者の実質的な天下り先を用意している。さらに、電力会社は、多くのテレビ報道番組の有力スポンサーであり、電力会社にとって不利な自由化報道を牽制している。経済産業省も、元職員を電力会社に天下りさせており、電力会社の意向に反した自由化政策をとることが難しい。電力業界は組織として、政管との癒着がもっとも激しく、電力自由化は、遅々として進展していないのが現状である。[要出典]

 

広島県広島市のジャスコ宇品店は2005年11月より九州電力の区域外電力供給を受けるために中国電力からの電力受給を取りやめるなど既存会社でも競争が激しくなっている。
==引用ここまで==