ゲート・シアターで演劇『Dancing at Lughnasa』を観てきました。隣接のアンバサダー・シアターには昔行ったことがあるのですが、ゲート・シアターは初めて。モダンな雰囲気の小劇場です。
『Dancing at Lughnasa』はアイルランドの劇作家ブライアン・フリール (1929 - 2015) の代表作です。日本でも『ルナサに踊る』のタイトルで翻訳劇が上演されているようです。1998年にはメリル・ストリープの主演で映画化もされています。
ルーナサというのはアイルランドやスコットランドで8月に行われる収穫祭のこと。キリスト教以前からの伝統です。舞台は1930年代のドネゴールの寒村。つましく暮らす未婚の5人の姉妹。末妹のクリスには行商人との間にできたマイケルという子供がいます。長兄のジャック神父はアフリカでのミッションから25年ぶりに戻ってきたばかりなのだが、心身に不調を抱えている。
語り部は大人になったマイケル。子役のマイケルは登場せず、他の役者さんはそこに子供のマイケルがいるものとして話しかけます。それに答えるのは、舞台上で他の登場人物からは透明人間になっている大人のマイケルです。
大人のマイケルは姉妹たちがこれからどうなるか知っています。敬虔なキリスト教徒である長姉はおそらくはアフリカの異教に傾倒するジャック神父のせいで教職を失い、編み物の内職をしていたアギーとローズは近くにできた縫製工場に職を奪われたあげくに出奔し、ジャック神父は死に、マイケルの父ジェリーはしだいにこの家を訪れる回数が減っていきます。
降りかかるさまざまな難儀に折り合いをつけながら、我慢強くしたたかに生き抜く姉妹の様子が描かれるわけですが、幕が下りた後に心に強く残るのは、調子のよくないラジオから流れる音楽にあわせて姉妹たちが狂ったように踊るシーンです。それは希望の光なのか、それとも因習を断ち切ろうとするもがきなのか。
5人の姉妹には実は緩いモデルがいて、フリールのお母さんとその4人の姉妹です。フリールのお母さんは結婚していましたが、4人の姉妹は生涯未婚で子供もいなかったそうです。こちらのアイリッシュ・タイムズの記事に詳しいです。
舞台の台詞はとても全部は聞き取れませんので、事前に本を買って予習しました。本を読んだうえで実際の舞台を見ると、ああここは笑うところだったんだとか、この場面で台詞をしゃべってない役者さんはこんな表情で感情表現しているんだとか、いろいろわかって面白いです。
ゲート・シアターでの公演は9月21日まで。