先週、ロスコモン (Roscommon) の町に行ってきました。ロスコモンの町はロスコモン県の県都です。人口は約6500人。ロスコモン県全体でも人口は約7万人しかいないんですね。アイルランド語のつづりは Ros Comáin で「聖コマンの木」という意味。5世紀にこの地に修道院を設立した Coman mac Faelchon にちなみます。修道院の近くに林があり、そこが Ros Comáin と呼ばれるようになり、それを英語風につづって Roscommon になりました。
私はロスコモン・タウンに来るのはまったくの初めて。ロスコモン県でいっても、M4やM6が通っているので車で通ったことはありますが、降り立つのは初めてかもしれません。
ロスコモンの町は中心にスクエアがあり、その周りにいくつか歴史的な建築物や記念碑があります。まず、The Old Gaol と呼ばれる建物。直訳で「昔の刑務所」ですね。1745年に建てられたこの建物は1820年ごろまで刑務所として使用されました。この刑務所は、Lady Betty と呼ばれる女性の死刑執行人がいたことで有名です。レイディ・ベティはもともと犯罪者だったのですが、無償で死刑執行人を務めるかわりに刑を免除されたのだそうです。2021年には『Lady Betty』という短編アニメ映画も作られていて、コルム・ミーニーなどが声の出演をしています。その後は精神病院や天然痘患者の隔離場所として使用された後、住居や商業施設に転用されました。当時の構造物で現在も残っているのは正面の壁だけです。他の部分は1980年代に再開発のために取り壊されてしまいました。
続きましてハリソン・ホール (Harrison Hall) と呼ばれる建物。こちらは17世紀に刑事裁判所として建てられましたが、一部が崩壊したので1762年に建て替えられ、裁判所およびマーケット・ハウスとして生まれ変わりました。1863年にカトリック教会になったあと、20世紀に入ってハリソン・ホールという名のリクリエーション施設となりました。ダンス・ホール、映画館、劇場として使用されたそうです。「ハリソン・ホール」の名前は大飢饉のときに救貧院に勤めていたジョン・ハリソン医師にちなむものです。現在はバンク・オブ・アイルランドが入っています。
こちらはナショナリストでロスコモン選出の国会議員だったルーク・パトリック・ヘイデンさん (c1850 - 1897) の記念碑。非常に人気のあった人で、彼の死に際しては葬列が1マイルにも及んだそうです。
次はスクエアに建っているハイ・クロス。1910年に亡くなったウィリアム・A・バーンさんという獣医さんの記念碑らしいのだが、この人の名前で検索しても何もでてこないし、このハイ・クロスについても言及されている資料がでてこない。
ロスコモン・カウンティ博物館兼ツーリスト・オフィスもスクエアに面しているのですが、これについては明日書きます。
さて、ロスコモンの町のはずれにはロスコモン・キャッスルがあります。これはとても大きな廃墟。1269年にヘンリー3世に仕えるダブリン司法長官により建設が始められました。この城は現地のアイルランド軍勢に繰り返し攻撃され、14世紀半ばにコナハト王オコナーの手におちます。その後、200年ほどにわたり、短い中断をはさんでオコナー家の支配が続きます。1641年にイギリス議会派に制圧されますが。1645年にアイルランド・カトリック同盟が奪い返します。1652年にクロムウェルの軍勢の攻撃を受け、最終的には1690年に焼き払われて、その後は朽ちるがままになっていました。現在は政府が保護する歴史的建造物となっています。広い公園の中にあり、散歩コースになっています。