たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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加藤久仁生さんのオスカー受賞スピーチ

アカデミー賞でアニメ短編映画賞を取った加藤久仁生さんの受賞スピーチがアメリカの人たちにウケています。たどたどしい英語で、「サンキュー、○○」を何回か繰り返して、最後に「ドモアリガト、ミスターロボット」で落とすのです。

実際のスピーチの模様はここです。

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たわいもないギャグなんだけど、実は相当計算されているような気がする。「ドモアリガト」というパンチラインの直前の2つのサンキューは語気を強くして畳み掛けてきてるし、パンチラインの後は大声で感謝の言葉を言って、スピーチが終わったことを明らかにして観客の拍手を誘ってる。パンチラインの前の若干の躊躇は狙いなのか素なのかわからないけど、狙いだったら相当演技派だ。

オーディエンスは、この幼稚園の生徒みたいなスピーチはどこへ向かおうとしているのかと最初からハラハラさせられるし、母国語でない英語でしゃべってるわけだから笑うに笑えないんで困っちゃうんだけど、その緊張が極限に達したあたりで「ドモアリガト」でパチンと外してあげて大爆笑を誘う。うまいですよね。

加藤さんのThank youの発音がSank youに聞こえるんだけど、ネットを見てみたらこれも狙いだと言っている人がいた。最初にオスカー像を渡されたときにIt’s heavyっていうんだけど、そこからSank youにつなげていって、そしてそれは海の中に徐々に沈んでいく家に住む男を主人公にした受賞作を示唆していると。さすがにこの読み方はウガチ過ぎだと思うんだけど、あんまり英語しゃべれない人がオスカー像渡されてとっさにIt’s heavyって言わないかもなという気もする。

Styxの「Domo Arigato Mr. Roboto」っていう曲は、80年代にリアルタイムで聞いてたときは、日本語が出てきておもしろいなーぐらいに思わなかったし、日本の雑誌とかでもそんな取り上げられ方だったと思うけど、今聞き直してみると、フーチャリスティックな管理社会のビッグブラザー的な小道具としてステレオタイプの日本を使ってるだけなんですね。それに対する意趣返しみたいな意味もあったから加藤さんのジョークにアメリカの人は笑わずにいられなかったんだと思う。

受賞作の「つみきのいえ」をぜひみてみたいですね。Youtubeなんかで検索すると「ロボットさんからの権利侵害の申し立て」により削除されています。ロボットっていうのが加藤さんの会社の名前ね。

おくりびと」のほうは日本に帰ったときに観たんだけど、地味な作品なので期待せずに行ったら、思いがけずかなりよかったです。お勧めです。役者さんも監督さんもよかったけど、アカデミー賞を取れたのは主人公の成長物語にカッチリ仕上げた脚本の小山さんの力が大きいと思う。好き嫌いはあると思うけど、アカデミー会員にはわかりやすかったと思うし、主人公がうだうだ悩んでそのまま終わっちゃうような映画よりは、普遍性は獲得しやすいと思う。