たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

文化交流

友が文化交流のイベントを主催したので、仕事も暇だったし、アムステルダムまで行ってきた。会場は18世紀のカナルハウスで、内容は、日本酒の試飲、日本人女性数人が着物を着て着物の解説、書道の実演と解説 (外国人の参加者も実際に筆をもって扇子に文字を書いた)、寿司の解説・実演・試食、社会の成り立ちについての考察、そしてオランダ人ピアニストによるオランダ人作曲家の作品の演奏など。

箇条書きにしましたけど、「社会の成り立ちについての考察」というのが浮き上がってますよね。私もちょっとどう表現していいのかわからない。登場したのはオランダ人の白髪の紳士なのですが、どうも日曜哲学者 (日曜大工と同じ意味で) というか兼業哲学者 (兼業農家と同じ意味で) らしく、A4の用紙を10枚ほど綴じたものをみんなに配ってプレゼンテーションを始めるのです。

社会はinspirators、warriors、traders、そしてworkersから成り立っており、かつてはこれらの役割の人々が階層となって存在していたのだけれど、現在は個人が状況に応じてこの4つの役割を果たすような世の中になっていて、隣の個人に受け渡すのに何が自分の文化において受け渡すべき部分 (長所) で、逆に自分に受け渡されるべき部分 (短所) は何なのかを考える。。。。といったような、社会の成り立ち方に関する彼の考察を披露してくれるわけです。

私は特に「ああ、これが世の中の真理なのだな」と蒙を啓かれた気分になったわけではなく、面白い考え方だな、これを使えると思う人は使えばいいし、使えないと思えば右から左に受け流せばいいわけだし、ぐらいに思ったのです。つまり、特に説得されたわけではないのです。だけど、この日のイベントの中で、この紳士のパートに一番力強さを感じたのです。それはたぶん言葉の力というか、言葉で論理を構築していくことのパワーをあらためて感じさせてくれたからだと思います。

理論的であること (きっちり) と芸術的であること (ふぁじー) って二項対立的に語られること多いけど、理論を組み立てることもやっぱりアートなんだなーと思いました。人の想像力に働きかける力という点で。あと、関係ないかもしれないけど、経済活動と文化活動も二項対立みたいになることが多いけど、経済活動も文化活動のひとつだと考えると仕事するのも楽しくなる。そうでもないか。

たとえば、書道の会、お寿司の会、そしてこの日曜哲学者さんの会が個別にあったとしたら、たぶん一番人気がないのは日曜哲学者さんのだと思うんです。でも、この日のようなイベントにおいて、書道やお寿司は、もちろん奥は深いんだけど、目に見えるtangibleなものだから、参加者が表面的にだけ消費してしまうことが可能です。そこで、日曜哲学者さんの世の中の成り立ちをどう捉えるかというintangibleな提案を挟むことで、このイベントの深みがぐっと増した。彼もおいしいところをもっていったけど、イベントの格も数段上がった。この人をブッキングしたオーガナーザーの友の才能に乾杯です。