私の話ではないんですけど。
年末にテレビでグレアム・ノートン (というコメディアン、すぐ下の写真) のチャットショーを見ていました。素人が出てきて、実際に身の上に起こった話をする。面白かったら最後まで話させてくれるけど、つまらないと椅子がひっくり返って退場させられるというコーナーです。
ベルファスト出身の 30 歳くらいの男の人が出てきて話を始めました。彼は何かの記念日に彼女と一緒にダブリンに行って、レストランでディナーを食べたそうです。
すると、U2 のボノや彼の友人たちがそこで食事をしていたんですね。ベルファストの彼と彼女は 2 人ともボノの大ファンだったので、サインをもらいたいと思ったのですが、アイルランドでは有名人がプライベートの時間を楽しんでいるときにサインをもらいにいくのはマナーに反するので、どうしたものかと悩んでいました。
すると、ボノがトイレに立ったのです。これはチャンスとばかり、ベルファストの彼はボノのいない隙に友人に近づき、「ボノにサインを頼みたいんだけど、いいだろうか」と尋ねました。
ボノの友人は「彼はとてもプライバシーを大事にする人だから僕が答えることはできないけれど、彼が帰ってきたら聞いてあげるよ。もし OK だったら、手招きしてあげるから、そしたら来なさい」と言ってくれました。
ボノが帰ってきて友達と話をしています。ドキドキしながら待っていたら、友達が手招きしています。カップルはボノのテーブルに行って、サインをもらい、友達にカメラを渡してボノと一緒に写真を撮ってもらい、しばし歓談したりしたのです。
カップルにとってはすばらしい記念日になったわけですが、お会計をする段になってウェイターさんを呼ぶと、「お代はすでに頂いています」とのこと。
「え、まさか、ボノさんが支払ってくれたんですか」と尋ねたところ、ウェイターさんは「いえ、ブルース・スプリングスティーン様にお支払いいただきました」と答えたそうです。
解説はいらないと思いますけど、ボノの友達と思った人はブルース・スプリングスティーンだったんですね。
ここからはおまけなんですが、私はこの話をものすごく面白いと思ったんですね。それで、数日後にアラサー日本人女性にこの話をしたんです。もう「ブルース・スプリングスティーン様にお支払いいただきました」のパンチラインでどっかんどっかんバカ受けと思ったんですが、反応が薄いんです。聞いたら、ブルース・スプリングスティーン知らないっていうんですよ。このときは私は「えー、スプリングスティーン知らないのー」みたいなこと言ったんですが、それで、よせばいいのに日本に帰ったときにこの話をまたしたんですよ。相手は 20 代前半女子です。このときは、もうきょとんとされました。
それで私は悟ったのです。自分の信じている常識なんてほんとうに狭い範囲でしか通用しないのだと。それに気付けてよかったよ。ありがとう、ボス。