たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

コリント・ゲーム

今日、お友だちと街を歩いていてアヴォカに行ったら、ヴィンテージ物のコリント・ゲームを売っていました。(アヴォカっていうのは、元々はアイルランドの毛織物の工場だったんだけど、今はファッション、生活用品、食品なんかを売っている、なんというか「総合的な生活スタイルを提案する」みたいなチェーン店。小洒落たプレゼントなんかを買いたいときにも役に立つようなお店です)

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上の写真のは定番のコリント・ゲームです。私も子供の頃、これによく似たデザインの小さいのを買ってもらって、妹と一緒によく遊んでいました。

そらからこちらは、トランプの絵柄になっているもの。

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次は、サッカーをモチーフにしたものです。

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続きまして、幾何学的な模様のもの。ちょっと、これあたりは昔のパチンコ台っぽい雰囲気があります。

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それから最後は、デザインは普通だけど、木じゃなくてブリキ製。得点エリアの凸凹なんかも金属を打ち出す形で仕上げています。

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こういうのを見ると物凄く欲しくなるんですけど、冷静に考えると置く場所もないし、けっこういい値段だったので買いはしませんでした。ちなみに、上の 4 つが縦 75 cm くらいの大きさなんですけど 110 ユーロ、一番下のがちょっと小さいので 50 ユーロです。

それで、家に帰ってきてコリント・ゲームって英語でなんていうのかなと思って調べ出したら、深みにはまってしまいました。

まず、「コリント・ゲーム」というのが和製英語らしくて、「コリント」が「Corinthian (コリント人)」だと分かるのにしばらくかかりました。

結論を先に書いてしまうと、コリント・ゲームの英語訳は「バガテル (Bagatelle)」(「テ」にアクセント) です。正確にいうとコリント・ゲームはバガテルの一種ということらしいですけど。

もともとこのゲームはビリヤードの変種のようなもので、屋外でやってたクロッケーのようなゲームを置くないでできないか、ということで考案されたそうです。

ビリヤード台のようなテーブルの一方の端を半円形にして、そのあたりにボールが入るような窪みをいくつか作ります。そうして、もう一方の端からキューでボールを打つわけです。それだけだと、つまらないので、途中に障害物として杭をたてたりした台もありました。これがバガテルの始まり。書物による記録では 15 世紀にまで遡り、17 世紀に使われてた台は現存しているそうです。

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上の絵は、1863 年のアメリカの政治風刺画で、バガテルで遊んでるのはリンカーン大統領です。これを見ると、昔のバガテルの雰囲気をつかむことができます。

それから、次のサイトは昔のゲームを復元する会社のものです。リストアしたバガテルの写真がいくつかあります。
http://www.mastersgames.com/misc/used/folding-bagatelle.htm
このサイトのは、ビリヤード台みたいにはなってなくて、折りたたみ式でテーブルの上に載せて遊ぶやつですけね。まだ、この時点では台に傾斜が付いてないのがわかります。

それで、なんでバガテルっていう名前になったかといいますと、1777 年のことですが、ルイ 14 世の弟のアルトワ伯爵が莫大な費用をかけてバガテル城っていうのを建立して、そこでルイ 14 世夫妻のためにパーティーを開いた。そのパーティーでの呼び物が、傾けたテーブルの下の端からキューで象牙のボールを打ち上げて得点を競うという新しいテーブル・ゲームだったのです。そこで、お城の名前をとって、このゲームがバガテルと呼ばれることになりました (以上、この段落は Wikipedia からの受け売りです)。

Bagatelle は、イタリア語で「ささいなもの」を意味する Bagattelle に由来していて、英語の Bagatelle にはこのゲームを指す以外に、今でも「ささいなもの」という意味があるし、それから音楽のジャンルとしてピアノの小品のことも指すらしい。

アルトワ伯爵のバガテルは今のコリント・ゲームよりも大きなものだったと思うのだけど、それを小型化してテーブルの上で遊べるように工夫したものが、19 世紀の終わりぐらいにでてきた。文献によってはこれをパーラー・バガテルと呼んだり、ピン・バガテルと呼んだりしています。

そして、このパーラー・バガテルの一種がコリンチャン・バガテルということらしいのだが、この Corinthian っていうのが何かというと、どうもバガテルを作っていた会社の名前のようです。これにはっきりと言及した文章はみつからなかったんだけど、イギリスの eBay にヴィンテージ・コリント・ゲームを出品している人がいて、その人が製造元を示すと思しき Corinthian と書かれた銘板の写真をアップしていたので間違いないと思う。

たぶん、この Corinthian という会社は今はなくなってしまいました。検索すると Corinthian Games という会社がヒットするんだけれど、この会社は「ミニスターズ・チェス」っていうチェスの変種を専門に売っているからたぶん違う会社。ちなみに「ミニスターズ・チェス」は女王を 1 つずつ増やして駒の並びを左右対称にしたというもの。いろんなこと考える人がいるなー。

ああ、コリント・ゲームが懐かしくていろいろ調べてたら、時間がまたたく間に過ぎてしまった。ほんとにこんなことしてる場合じゃないんだけど。




2011/7/2 追記: もうちょっと調べてみたら、フィンランドのユシラ社っていうところがバガテルを作ってて、イギリスで売るときに Corinthian Bagatelle っていう名前で売ることにしたらしい。これはフィンランドの某大学の Web サイトに載ってた記事なので本当と思う。

それで、なんで Corinthian にしたかというと、イギリスの輸入元がコリント商会 (Corinthian Trading ??) という名前だったから、と書いてある日本語のサイトがあった。

あと、Wikipedia には、小林脳行っていう会社が日本に輸入したときに、小林を音読みにしてコリンにして発売したっていう風に書いてあるんだけど、これはどうだろう。ちょっとウソ臭い。