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ローリー・マキロイ選手の全米オープン優勝

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先週末のゴルフの全米オープンで、北アイルランド出身のローリー・マキロイ選手が優勝しました。弱冠 22 歳。これで、昨年のグレアム・マクダウェルに続いて、2 年連続で北アイルランドから優勝者が出たことになります。

先週の日曜は、アイルランドもイギリスも大騒ぎでした。アイルランド的には彼はアイルランド島で生まれたアイリッシュなので大喜び (ブリテン島生まれではないから、彼はブリティッシュではない)。イギリス的には北アイルランドは UK の一部だから当然嬉しいし。

日本の報道だと「マキロイ (英)」って書かれてるんだけど、この (英) が物凄く違和感ある。いや、まちがってるって言ってるわけじゃないんです。「英」が UK のことを指すのは頭では分かってるんですけど、そこは「北アイルランド」と書いてほしい、と思ってしまいます。

どうも、アイルランドに長く住んだせいなのか、UK が「ブリテン島 + どさくさに紛れてあっちのものになっちゃってる北アイルランド」と頭が捉えてるみたいで、北アイルランドにちょっと特殊なステータスを与えてしまってるみたいです。ブリテン島のイングランド、スコットランド、ウェールズが英国で、それにプラスして北アイルランド、みたいな。勝手な解釈なんですけど。だから、スコットランドのコリン・モンゴメリーあたりに (英) がついてても、そんなに違和感はなかったと思う。

こちらの新聞だと、英国の選手の国名を示すのに (U.K.) とか書かずに、必ずイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドを使います。(オリンピックのときは除く)

私もこちらに来るまでは、スコットランドとかはイギリスの一地方だと思ってたんですけど、あれは実は地方じゃなくて国なんですね。英語で言うと country。最初聞いたときはびっくりしました。アメリカ人もびっくりしてたから、たぶんこの感覚はイギリス人とアイルランド人しかわからないんじゃないかと思う。

スコットランドやウェールズが国 (country) なんだったら、これと区別するためにユナイテッド・キングダムを何と呼ぶかというと主権国家 (sovereign state) です。まあ、混乱する恐れがないときは、つまり、だいたいにおいては、UK のことも country と言ってますが。

これだけでもややこしいのに、北アイルランドの存在がさらに話を複雑にしています。

北アイルランドとアイルランド共和国の間に境界線がありますが、英語だとあれは border、文字通り「境界線」という意味です。日本語だと普通は「国境」と訳しますが、私は「国境」と訳すのに抵抗があります。アイルランドはひとつなのであるから、あれは国の境ではなく、単に北と南との境目であると。「ボーダー」とカタカナで済ませちゃったりします。

それから、南の人や北アイルランドのカソリックの人は「北アイルランド (Northern Ireland)」ってあまり言わないと思うんだけど気のせいかな。「アイルランド北部 (North of Ireland)」って言うときが多いような気がするんだけど。意識的にやってるのかどうかはわからない。

ああ、話がものすごくそれてしまった。ゴルフの話です。

アイルランドのスポーツ系の協会は、アイルランド全島でひとつっていうスポーツの方が多いです。アイルランドが政治的に北と南に分かれる前から存在していた協会が多くて、そのままになっている。サッカーは北と共和国に分かれてしまったけれど (北のベルファストに本部があったので、南にも作る必要があった)、そういうスポーツの方が圧倒的に少ない。

ゴルフもアイルランド全体でひとつです (男女で団体わかれてるけど)。だから、マキロイの勝利は、アイルランドのゴルフ界の成功でもあるわけです。

マキロイ選手の優勝後のインタビュー (一部):
Q. アイルランド人のメジャーでの優勝が続いていることについて
A. 根本にあるのは人々です。アイルランドではゴルフはとても敷居の低いスポーツだと思います。もちろん、素晴らしいゴルフコースがたくさんあります。私が成長するにあたって大きな助けとなったのは、アイルランド・ゴルフ・ユニオン (アイルランド男子ゴルフの統括団体) です。私のジュニア時代、アマチュア時代を通してサポートしてくれ、そのおかげで私は世界のいろんな場所に行ってプレーし、さまざまな条件や文化を学び、それによってツアーに参戦する準備をすることができました。
パドレグ (ハリングトン) が ’07 と ’08 の短い期間にメジャーで 3 回優勝し、グレアム (マクダウェル) が去年このトロフィーを獲得し、今年は私が優勝したということで、アイルランドのゴルフがとてもいい状態にあると言うのは疑いようのないことです。

マキロイ選手はアメリカ人にも物凄く人気が出たみたい。田舎のお兄ちゃん丸出しの素朴な出で立ち、アイルランド訛り (そんなにきつくはない)、それから先々月のマスターズで最終日に大崩れして優勝を逃したのも記憶に新しいから、そこから立ち直って栄光をつかみとったっていう物語性もあるし。

Photo by Ed McDonald