たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

道しるべ

アイルランドの西の方に、バリヴォーアン (Ballyvaughan) という村があります。クレア県のザ・バレンっていうカルスト地形で有名な観光地の端っこにあり、有名なモハーの断崖からも近いです。

 

村の名前は聞いたことなくても、アイルランド好きの方ならこの写真の道しるべは見たことがあるのでは。

 

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もともとは、近くの街までの距離と方向を示すために交通局が設置した道路標識だったんだけど、そこに近所の B&B やらなにやらの商業施設が勝手に自分とこの標識を取り付けた。軒先貸したら母屋取られたみたいな状態です。1 本では足りなくなったんで、横に短いポストをもう 1 本立てて、そこも満杯になっています。

 

このサインポスト、にぎやかで楽しい雰囲気があるのと、お客さんを歓迎したくてしょうがないという気持ちがにじみ出ていると思われたのか、絵葉書にもなったし、HSBC (イギリスの大手銀行) の CM にも出演したし、アイルランド観光局の外国向けプロモーションにも使われたりしました。

 

ところがですね、アイルランド道路局 (NRA) が最近になって商業施設の標識を外してしまったのです。それで地元の人が文句を言っているという記事がアイリッシュ・タイムズ紙に出ていました。

 

地元出身のマーティン・コンウェイ上院議員もサインを元に戻すようにと訴えています。コンウェイ議員「NRA のやり方は傲慢で、観光客に対する思いやりはほとんどない」。

 

29 年前に標識を取り付けたカフェを経営するアラン・クラークさん「NRA は連絡もせずに標識を外した。返してもくれない。以前は写真を撮りに寄る人もいたのに」

 

やはり、世界的に有名だったランドマークがいきなり壊されてしまったという喪失感もあるだろうし、地元の経済に与える影響も当然無視できないということでしょう。

 

しかし、NRA も負けていません。NRA 広報担当のショーン・オニールさん「NRA は国の法律を執行しています。道路ネットワークにおける標識の目的は、交通の秩序ある流れを提供することにより、安全性と効率性を提供することです。道路標識は、道路ユーザーに対して、規制、警告、行き先に関する情報を提供するために使用されます。交通の管理や制御に関係のない広告やメッセージを含めることはできません」

 

勝手にスペース使わせてもらってたのに上院議員まで巻き込んで悪びれずに文句言っちゃう地元の人たちも借り暮らしのアリエッティみたいだし、それに対するお役所の人も、自分の仕事に誇りを持ってるんだけど、あまりに真面目にやりすぎるもんだから周りの人とぎくしゃくしちゃうという童話の脇役みたいな人だ。

 

こういう話を読むと、アイルランドの西の方の人は、ほんとは半分ぐらいレプラコーンが成り済ましてるんじゃないかと思う。今度、西の方に行くときは、映画『They Live』の、あの黒メガネを持っていきたい。

 

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(上の写真は Irish Times 紙から、下の写真は Wikipedia から)