たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

Is féidir linn - Yes We Can

今週の月曜日にバラク・オバマ大統領とファースト・レディーのミシェルさんがアイルランドにやってきました。

 

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朝早く、エアフォース・ワンでダブリン空港に到着。一泊する予定だったんだけど、アイスランドの火山爆発で飛行機が飛べなくなる事態を避けるために、その日のうちに次の予定地であるロンドンに向けて旅立ちました。

 

アイルランドではいろんな行事をこなしたんですけど、ハイライトは 2 つ。大統領のご先祖様の出身地であるモニゴールの訪問と、ダブリンはトリニティ大学前での青空演説会です。

 

モニゴールっていうのはオファリー県にある人口 300 人ほどの小さな村です。19 世紀の半ばにファルマス・カーニーという靴職人がこの村からアメリカに旅立ったんだけど、彼のひーひーひー孫が第 44 代アメリカ大統領になって帰ってきたというわけです。

 

モニゴールでは遠い親戚 (8th Cousin、日本語でどう訳したらいいかわからない、またまたまたまたまたまたまたいとこ?) にあたるヘンリー君が案内役を務めました。ヘンリー君は単なるアイルランドの田舎のお兄ちゃん。地元ではヘンリー 8 世と呼ばれているそうです。

 

4500 人がモニゴールに詰めかけたそうなんだけど、オバマ夫妻は握手したり、写真撮られたり、赤ちゃんを抱き上げたり、 45 分間も沿道でコミュニケーションをとった。これほど長い時間、一般の人と触れ合うのは異例のことだそうだ。

 

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途中、パブに入って、ギネスを注文。4 口で飲み干すと、お金をちゃんと払った。「大統領もお勘定は自分で払うんだってことを知っておいてほしいんだよ」という軽口を叩きながら。パブのオーナーはお釣り渡すのを忘れたらしい。大統領が飲んだグラスは DNA が検出できないようにすべて破棄されるっていう噂話を聞いたんだけど、それは嘘で、大統領のグラスはパブのオーナーが大事にとってあるそうです。

 

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午後には、ダブリンに戻ってきて、トリニティ・カレッジ正門前の広場 (カレッジ・グリーン) でスピーチ。まず、アイルランドのエンダ・ケニー首相が演壇に立って大統領を紹介する。「he doesn’t just speak about the American dream. He is the American dream. And that is the American dream, come home. (彼はアメリカン・ドリームについて話をするだけではありません。彼こそがアメリカン・ドリームなのです。アメリカン・ドリームが故国に帰ってきたのです)」。

 

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続いて、オバマ大統領の 23 分にわたる演説。開口一番「ハロー、ダブリン! ハロー、アイルランド! マイ・ネイム・イズ・バラク・オバマ」。大歓声。「モニゴールのオバマ家です。どこかで失くしてしまったアポストロフィーを探すために故国に戻ってきました」。もちろんオバマはアフリカの苗字なんで、O’bama からアポストロフィーが落ちて Obama になったわけじゃないんですけどね。アイルランド系であることをネタにして聴衆とのラポールを築こうという試みですね。もう、つかみはおっけー、どころか、名前言った時点で大歓声なんだから、もうどんだけお客さんあったまってたんですか、っていうことです。

 

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演説は続きます。「Never has a nation so small inspired so much in another… (これほど小さな国が他の国 (アメリカ) にこれほど多くの刺激を与えたことはなかった)」。「There's always been a little green behind the red, white and blue. (赤と白と青 (アメリカ) の後ろにはいつの小さな緑 (アイルランド) があった)」。なんて言葉でアメリカとアイルランドのつながりを強調します。

 

それから、アイルランドを勇気づける言葉。「This little country that inspires the biggest things, your best days are still ahead. Our greatest triumphs in America and Ireland are still to come. And Ireland if anyone ever says otherwise that your problems are too big you challenges are too great, that we can't do something, that we shouldn't even try think of all the things that we've done together. Remember that whatever hardships the winter may bring, spring is just around the corner. And if they keep on arguing with you just respond with one simple creed, 'Is feidir linn,' 'Yes we can'. (最も重要なさまざまなことをインスパイアするこの小さな国。あなたたちの最良の日は未来にあります。アメリカとアイルランドに最大の勝利はこれから訪れます。そして、アイルランドよ、もしこれに同意しない誰かが、あなたたちの問題は大きすぎるし、あなたたちにはこの挑戦は荷が重すぎるし、私たちは何かをやり遂げることができないだろうとか、努力することすら無駄だとか言ったとしたなら、私たちが一緒に成し遂げてきたいろんなことを思い出してください。冬がどんな困難をもたらそうとも、春はすぐそこに来ていることを思い出してください。それでも議論をやめようとしない人がいたなら、このシンプルな信条で言い返せばいいのです。Is féidir linn! Yes We Can!)」 (Is féidir linn はアイルランド語で Yes We Can の意味です)

 

オバマ大統領とミシェル夫人の訪愛は、まさしくロックンロール・ショーでした。その前の週にやってきたエリザベス女王のときは、頭では歓迎しないとと思ってるんだけど、心がちょっとブレーキかけてるみたいなぎこちなさがあったんですが、オバマ大統領に対しては心の底から、両手を広げて、アドレナリンを迸らせながらの歓迎でした。

 

アイルランドとアメリカは政治的に解決すべき課題みたいなのがほとんどないこともあるんでしょうけど、これほどリラックスして防御を解いて楽しそうにしているオバマさんを見たことはありません。それはもちろん来年の大統領選に向けてアイルランド系アメリカ人の票を獲得するためのパフォーマンスの意味はあったでしょう。そんなのは当然あります。だけど、口の端を歪めて「政治も所詮はモンキー・ビジネスなんだよね」なんてシニカルなことを言う人も、「Yes We Can」の愚直なまでのポジティブ・シンキングを目の当たりにしたら、すごすごと尻尾を巻いて退散するしかないかなー。

 

実は私もオバマさんを見に行ったんですけど、クライスト・チャーチのあたりまで人がいっぱいで、まったく話になりませんでした。御存じのように、デイム・ストリートはクライスト・チャーチの手前にクランクがあるんで、カレッジ・グリーンまで見渡せないんですけど、それでも人が並んでました。最前列の人は前日の夜から並んだらしいです。

 

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今回の大統領の訪問に関しては、心温まるエピソードが山ほどあるんだけど、とても書ききれません。翌日のアイリッシュ・タイムズ紙には 12 ページにわたる別冊付録が付いていました。あー、なんか、エリザベス女王とオバマ大統領の訪問、それからその間にはフィッツジェラルド元首相の国葬もあって、嵐のような 2 週間でした。エンダ首相もよく頑張ったよな。

 

(最後の写真だけ私が撮りました。あとはアイリッシュタイムズから拝借)