たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

太地町のイルカ漁

イルカ漁や捕鯨のことを書きたいと前から思ってたんですけど、書くことがありすぎるので、どこから始めていいのかわからず、ここまで何も書かずに来たんだけど、とにかく何か書き始めないとしょうがないということで、とにかくできるところから書きます。
 
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今、反捕鯨団体のターゲットになっているのは和歌山県の太地という街です。太地は古式捕鯨の発祥の地ということになっていて、捕鯨に関しては400年近くの歴史があります。3年ほど前に私はこの街を訪れたことがあるんですが、温暖で長閑な漁業と観光の町でした。
 
イルカは国際捕鯨委員会(IWC)の管理の対象とはなってないので、太地町では国内の法律の枠内でイルカ漁を行っています。割り当て頭数は年2000頭ぐらい。ただし、割り当て頭数いっぱいまで獲るわけではないようです。日本全体では23万頭の割り当てと思います。
 
和歌山の他には岩手や静岡などで獲られているんですが、太地がなぜターゲットになっているかというと、漁の方法がほかと違うからということになっています。太地で行われているのは追い込み漁といって、イルカの群れを沖から入江に追いこんで捕獲します。日本の他の場所は銛で突いて獲るタイプです。追い込み漁の方が残酷ということらしいです。
 
デンマークのフェロー諸島でも太地と同じタイプの漁が大きな規模で行われていますが、主なターゲットになっているのは太地。これはなぜなのかを考えるとけっこう面白いと思うのですが、長くなりそうですのでここでは触れません。
 
それで、シーシェパードっていう過激な団体が漁の時期になるとやってきて、いろいろな妨害行為を行っていると。
 
最近、フジの「スーパーニュース」(2010/11/26放送、「追セキ」コーナー)やテレ朝の「報道発ドキュメンタリ宣言」(2011/2/5放送) でもこの話題を取り上げたようです。
 
 
 
両方とも落ち着いたトーンでシーシェパードの独善的な態度を浮き彫りにしたよいレポートだと思いました。
 
ただ、「スーパーニュース: 追セキ」の方は、編集ビデオが終わってスタジオでのコメントがひどいんですよ。
 
書き写します。
 
現地取材した男性レポーター「実際取材をして感じたことが彼らの語る主張が、自己陶酔にも近いものがあって、その中でVTRにあったように矛盾に自分でも気づいてない」
司会の安藤優子さん「理論(?)破綻おこしてましたよね。ただ、子供の喧嘩になるかもしれませんが、いわせてもらえば、オーストラリアでカンガルーを害獣として処分しているのをあなたたちはどういう風に説明するんですか、とかいろいろあるんですが、でもそれを言っちゃうと子供の喧嘩になっちゃうんで、周さんね、どうしたらいいんですか、こういうのは」
山本周さん「これはだから許し合うしかない」
安藤さん「許し合う」(笑)
山本さん「文化の違いだからこれはしょうがないですね」
 
まず、安藤さんの「子供の喧嘩」っていうのが分からないんだけど、理不尽なことを言ってくる相手に対してはちゃんと異議を申し立てて、自分で自分を守るための言葉と胆力を持ってるのが「大人」だと思うんですけど。反論することがなんで「子供の喧嘩」なのかな。「オーストラリアでカンガルーを、うんぬん」の議論が子供っぽいというなら、大人っぽい議論を考えればいいだけの話だし。安藤さんほどの人が、なるべく波風をたてないことが「大人の対応」だと考えてるとは思えないのだが。
 
それから、山本さんはフジテレビ報道局解説副委員長だそうですけど、「許し合うしかない」んだそうです。
 
私ももちろん「許し合う」ことがとても大切だということには異論はありませんけれども、山本さんのこの発言は無責任だと思います。なぜかというと、具体的なことを何ひとつ言ってないからです。
 
自分勝手な正義を振りかざす人たちからの悪意に晒されている漁師さんたちが現実として存在します。(まあ山本さんはシーシェパードと立場を同じにする人かもしれませんので、ここは「イノセントで知能の高いイルカを虐殺する漁師たちに必死に立ち向かう正義の活動家たちがいます」と読み替えていただいてもかまいません)。そういう人たちに「許し合うしかない」と声をかけたところで、何の役に立つでしょうか。もうちょっと解決に役立つ具体的なことを言ってあげた方がいいのではないでしょうか。
 
なんか、この人、絶対反論されないことだけ言って逃げちゃったなーという印象も受けます。また、「あー、許し合うという気持ちの問題なんだー」と思っちゃうので、聞いてる人が何か具体的に行動したり、考えたりする動機づけとはなりません。
 
ここから先は言いがかりになるかもしれませんけど、日本の大手メディアの編集委員みたいな人の発言は、こういうのが多いです。つまり、「許し合う」とか「平和は大切」とか「共生」とか、誰もが賛成するような価値については語ります。だけど、それを達成するためにはいろんなめんどくさい具体的な作業については知らんぷりだったりするんですね。そこの段階では絶対的に正しい何かは存在しないんで、いっぱい反論されるからかなと思います。
 
いちおう言論機関の偉い人が公共の電波でしゃべってんだから、見ている人が使い回したくなるような、または、「そうそう、おれはこういうことが言いたかったんだよ、言葉にしてくれてありがとう」と思うような、言葉とかロジックとか思考の組み立て方を見せてくれれば、マスコミももうちょっとリスペクトされると思うんですけどね。あー、あと、理不尽なものには議論で立ち向かうんだという胆力ですね、そういうのも見せてほしい。「許し合うしかない」、「文化の違いだからしょうがない」じゃ、おっちゃん、おばちゃんの井戸端会議か飲み屋の馬鹿話レベルですよ。
 
というわけで、次回はもうちょっと具体的なことを書きます。
 
(写真は、退役した捕鯨船、いまは太地町で資料館になってます。)