
「The Social Network」という映画を見ました。Facebook の創業者であるマーク・ザッカーバーグの伝記映画かと思ったら、実話をもとにフィクションも散りばめた「ドキュドラマ」(ドキュメンタリーとドラマの中間) らしい。
ハーバード大学の寮の一室で設立された Facebook が、ナップスター設立者のショーン・パーカーなんかの助けを得ながら、またたく間に大企業に成長し、ザッカーバーグや彼の寮仲間がビリオネアになるまでの物語なんですが、ザッカーバーグが徹底的なアンチヒーローとして描かれています。プログラミングの才能だけでなく、権謀術数を弄して富を成していくトリックスターです。
ザッカーバーグは Facebook のアイデアを盗んだとハーバード大の学生から訴えられ、持ち株の比率を不当に下げられたとして寮仲間の共同設立者にも訴えられます。出資者のショーン・パーカーがパーティー会場で麻薬を吸っていたのが見つかって逮捕されるのですが、映画では警察に通報したのは実はザッカーバーグだったのではないかということも匂わせています。
底なしの Assh*le として描かれているわけですが、実際のザッカーバーグはそれほどでもないらしい。
上記の 2 件の訴訟は実際にあったもので、アイデア盗用の件では示談が成立して6500万ドルを相手に支払ったそうなのだが、ハーバードのロースクールのある先生は、「映画では本当の悪者が誰かが描かれてない」と言ってます。つまり、示談金なんてあったとしても数百ドルで十分、6500万ドルもの示談金を許す法律システムなんか恥である、ということです。
また、裏切られた共同設立者も映画では無一文になったみたいに描かれてますけど、実際には彼はまだ Facebook の株式を 5% ほど持っていて、ビリオネアです。
ザッカーバーグ自身も、「映画ではあんな風に描かれてるけど、実際には会社設立してから一生懸命働いてただけなんですけどね」と言ってる。だったら、こんな映画作るの許すなよ、と思うんだけど、Facebook の宣伝にもなるし、まあいっか、って思ったのかな。パブリックイメージには特に興味ない、俺は俺だし、みたいな感じなのか。
映画としてはよくできていると評価されていますが、ドラマの効果を狙って主人公たちが悪く描かれているので、「新しい技術やそれを推進する人への攻撃である」とか「社会の変化についていけない人が見たいと思うような映画」と批判している人もいます。
本筋とは関係ないんですけど、私の心に残ったのはハーバード大の学長の、「ハーバード大は優れた被雇用者 (employee) を輩出するのではなく、雇用主 (employer) を輩出するところなんですよ」(うろ覚えなので正確ではないかもしれない) という言葉です。
自分の市場価値や employability (雇用適正) を高めるとか、優れた被雇用者になるにはどうすればいいかみたいなことは盛んに言われますけど、雇用主になることをもっと奨励するような土壌があってもいいと思います。日本はなんか雇用はあって当たり前みたいな雰囲気ありますけど、雇用は誰かが作り出してるんですよね。もうちょっとなんか雇用作ろうとしてる人にリスペクトがあってもいいと思うんだな。

Mark Zuckerburg in 2005, photo by Elaine Chan and Priscilla Chan