たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

映画「Bananas on the Breadboard」(パン切り台の上のバナナ)

監督: Joe Lee
アイルランド、2009 年ぐらい?

 

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先週は、アイルランドのナショナル・ヘリテージ・ウイーク (National Heritage Week) なのでした。過去から受け継がれてきたものに対する意識を高めて、それを大切にすることを奨励するための一週間らしくて、いろんな小さなイベントがいろんなところで開かれました。

 

その一環として、グラフトン・ストリートのビューリーズ・カフェで、映画の観賞会が開かれた。その日の新聞にイベント情報みたいな形で小さな記事が載っていて、ダブリンの通りで物を売る人たちについてのドキュメンタリーとのこと。

 

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(ビューリーズ・カフェ)

 

ビューリーズ・カフェっていう上映場所も面白いし、最近アイルランドのドキュメンタリー映画が活気づいているという話も聞いていたし、通りで物を売る人にも興味があったので、夜の 7 時の上映にいってきました。木曜の話です。

 

会場は、カフェの 2 階のジェイムズ・ジョイス・バルコニーというところ。入口を入って右の階段を上ったところにお茶飲めるところがあるけど、そこは実は中二階で、バルコニーはその真上にあります。

 

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(バルコニーからグラフトン・ストリートを望む)


 

ちょっとしたバンケット・ルームといった感じで、30 人も入れば満杯。スクリーンも、カラオケのモニターぐらいの大きさですね。

 

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カフェの支配人さんみたいな人の挨拶があって、監督さんの挨拶があって、映画が始まります。なんの期待もしてなかったんだけど、この映画がおもしろかった。というのも、内容がまさに私の住んでる場所を含むエリアについてだったからです。

 

私が住んでるとこはスミスフィールド (Smithfield) っていうんですが、このあたりからフォー・コーツ (裁判所) のあたりにかけて、昔は市場がいくつかあって、マーケット・エリアと呼ばれています。今、現役なのは、青果市場だけなのですが、魚市場もあったみたいですし、私が越してきた 10 年前には私のアパートのすぐそばに別の青果市場もありました。

 

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(メアリー・ストリートの現役の青果市場)

 

映画は、このあたりで生まれ育った人のインタビューを中心に、昔の写真などを織り交ぜながら進みます。考古学者の発掘調査によると、このあたりには中世から市場があったらしくて、900 年ぐらいの歴史があるらしい。

 

街なかのムーア・ストリート (Moore Street) に並んでいる屋台は、世間に認められてるという感じがしますけど、ケイペル・ストリート (Capel Street) やヘンリー・ストリート (Henry Street) で売ってる人たちは、なんだか設備も簡単だし、どういう人がどういう資格でやってるんだろうと思ってましたが、この映画を見てだいたいのことがわかりました。

 

90 年代半ばに景気が急速に上向くまでは、アイルランドは結構貧乏で、職もなかった。それで、このあたりに住んでる人は、生活費の足しにするために、市場で果物を仕入れて、その辺で物売りをしていたらしい。それが、この辺のローカル・エコノミーになっていた。そういうことは、この映画を見るまで知りませんでした。

 

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(ムーア・ストリートの青果物売り)

 

だから、最初は許可を得てなかったんだけど、政府が無許可の物売りを禁止しようとしたときに、死活問題だっていうんで無所属の議員 (去年死んじゃったトニー・グレゴリー、映画でもインタビューに答えてたけど、やっぱりすごく痩せていた) を中心に声を上げたりとか。さすがに今は、許可とってるのかな。

 

Joe Lee 監督はケルティック・タイガー (つい最近の経済成長が著しかった時期) の時代に再開発で変わっていくダブリンをテーマに、この映画を含めて 3 本のドキュメンタリーを撮った。あとの 2 本の舞台は、インチコアとカブラだそうだ。

 

映画のタイトル、「パン切り台の上のバナナ」ですけど、これは物売りの人が昔風の乳母車の上に木製のパン切り台を置いて、その上にバナナなんかの商品を乗せて売ってることから来ています (下の写真参照)。Joe Lee 監督の 3 部作は、ダブリンの図書館で借りられるらしい。

 

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(ケイペル・ストリートにて)