うちから西の方に 2 分ぐらい歩いたところに、ストーニーバター (Stoneybatter) っていうヴィレッジがあります。ヴィレッジっていうのは、村っていうよりも、商店が集まったエリアです。ヴィレッジの西側に広がる住宅地も含めてストーニーバター地区というらしい。
このあたりに住む前から、「石のようなバター」って面白い名前だなーと思っていました。食べる方のバターのつづりは Butter なんですけど。Batter っていうのはアイルランド語で道を意味する Bothar から来ていて、Stoney はそのまんま「石」の意味。タラの丘から聖地グレンダロッホに続くまで続く石畳の道がこのあたりを通っていたらしい。
いわば、幹線道路だったわけですけど、その頃ストーニーバターのあたりには、お酒を飲ませるお店が並んでいて、タラに行く旅人たちの休憩場所になってたらしい。実際には聞いたことないんだけど、”To go to the batter” っていうアイルランドのスラングがあるらしくて、この batter はお酒の意味。そして、その由来はStoneybatter から。
この間のアイリッシュ・タイムズ紙にストーニーバターの記事が載っていました。10 年前にストーニーバターに家を買った若手の女性記者の記事なんだけど、1901 年と 1911 年の国勢調査が最近公開されたそうで、彼女が買った家に当時住んでいた人がどんな人だったかとか、ストーニーバターの歴史とか、そんな話です。
ストーニーバターは小さな長屋形式の家が立ち並ぶエリアで、ダブリンで最も密度の高い住宅地だそうです。
それでですね、このあたりを歩くたびにいつも気になってたんですけど、ドアの横の壁に窪みがあって、鉄の棒が窪みの前に渡してあります。
近くで見るとこんな感じ。
どの家にもついているので、ずっと何だろうと思っていました。ミルクを配達する人が瓶をここに置いていくのかなーなどとも思いましたが、それにしては収まりが悪いし。
今回の記事でその謎が解けました。Boot Scraper。つまり、靴の裏をこの鉄の棒にこすりつけて、土やなんかをこそぎ落とすわけです。
なんでこれが必要だったかというと、ここら辺の家が建てられた当時、ストーニーバターは往来が激しく、牛などの家畜を連れて移動する人も多かったらしい。それで、そこらじゅうが糞だらけだったのです。糞を避けて歩けばいいじゃないかと言うかもしれませんが、足の踏み場もないくらい落し物だらけだったのでしょう。
今でも、月に一回、スミスフィールド広場で馬の市が開かれますが、それでも結構すごいことになります。。昔、アイルランドで初めて野外コンサートに行ったときに、シャトルバスを降りて会場に歩くまでの道が、ビールの缶だらけだったのを思います。缶が散らばって落ちてるんじゃなくて、アスファルトが全部、踏みつぶされた缶に覆われて、銀色に光っていました。
それから、おまけ。ストーニーバターのおウチの窓のところでひなたぼっこしていた猫。