たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

ブブゼラ狂騒曲

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今回の W 杯でがぜん注目を集めているのがブブゼラです。あのうるさいチアホンみたいなラッパですね。

 

W 杯の開幕当初は、RTE (アイルランド公共放送) にも苦情の電話がたくさんかかってきたみたいで、進行役の人が「あの音に関してはこちらではどうしようもないんですよ」って言い訳してた。解説陣は、「いやー、南アフリカではあーいう風にサッカーを楽しむもんなんだから」とか「文化の一部だから」なんて鷹揚に構えていました。

 

あるラジオのパーソナリティは、英国の ITV や BBC の方がブブゼラの音が小さめで解説がよく聞こえるから、実況はそっちで聞いて、スタジオに戻ってきたときに RTE にチャンネルを切り替えればいいなんて提案していました。記事に書こう書こうと思ってまだ書いてないんですが、RTE の解説はほんと面白いですよ。サッカーの解説にかけては、イギリスの解説なんか子供扱いです。

 

ダブリンでも、アフリカ系のクラフト・ショップなんかでブブゼラを売ってるそうなんですが、すでに売り切れの店が続出とのこと。経営者もメディアの取材にひっぱりだこだとか。GAA (ゲーリック・フットボールなどアイルランドの伝統的なスポーツの統括団体) は、すでにブブゼラの持ち込みを禁止しました。

 

日曜紙のサンデー・トリビューンには、若い女性記者がクリケットの試合にブブゼラを持ち込んで吹いたらどうなるか、という実録記事が載っていました。

 

クリケットって日本ではなじみのないスポーツですけど、イングランドや、旧植民地のオーストラリア、南アジア、カリブ海あたりで非常に盛んなスポーツです。アイルランドではそれほどでもないです。まったりとした品のいい競技というイメージがあります。白い長ズボンに白いベストとか着て優雅にプレイするんですよ。

 

ブブゼラは品切れなんで、女性記者はスポーツ・パブで南アフリカの女性ファンからひとつ譲ってもらったそうです。女性は「ああ、私のブーブー。私のブーブーを手放そうとしてるなんて信じられないわ」などと、愛着を語っていたそうですが。

 

先週木曜日にアイルランド対オーストラリアの国際試合がダブリンで行われたのですが、記者はそこにブブゼラをバッグに忍ばせて持って行きました。吹き出したとたん、近くで観戦していたティーンエイジャーが「出てけよ」とつぶやきます。親子連れは驚いて記者を見つめることしかできません。

 

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30 秒もたたないうちに係員がやってきます。ブブゼラを見せてくれといいます。別のティーンエイジャーのグループは、「それ、彼女に返してやれよ。かっこいいじゃん」と腹を括ったみたいです。

 

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この 2 週間ほどブブゼラの話題でもちきりだったにも関わらず、その係員はブブゼラを知らなかったみたいで、ちょっと迷っていたんですが、最終的には問題ないっていう結論に達しました。試合の間、ずっと吹き続けても問題ないと。係員は「Enjoy yourself」と言って去っていきます。

 

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しばらくして、記者が帰り仕度を始めると、係員が「帰る理由なんて何もないよ。良ければずっといて、ゲームを楽しんで、それを好きなだけ吹いていけばいいじゃないか」と声をかけます。それを聞いて、ティーンエイジャーたちは歓声を上げ、親子連れはうなずきながら笑い声を立てます。

 

クリケットって、アイルランドではスカしたスポーツっていうイメージが強かったと思うんだけど、ガサツでプリミティブでトライバルなブブゼラへのおおらかな対応で、結構、株を上げたんじゃないでしょうか。