たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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ムンクの版画展

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ノルウェーの画家、ムンクの版画展が国立美術館で開かれています。学生時代にバンドで歌を歌っていたのですが、歌っているときの顔がムンクの「叫び」に似ていると言われたことのある私には、ムンクさんは他人とは思えません。先週木曜日に行ってきました。

 

ちなみに私は絵についてはほとんど素養がありません。学生時代に美術系の学校に通う女の子を好きになって、新潮美術文庫を何冊も買って眺めただけです。美術を学ぶのに美術館に行かずに本を買い込んじゃうところが本好きの悲しいところといえます。

 

アイルランド国立美術館は常設展は入場無料なんだけど、ムンク展は特別展ということで 5 ユーロかかります。ただし、月曜は無料で、木曜は 3 ユーロになります。曜日によって料金が変わるのがなぜかはわかりません。

 

ムンクさんは「叫び」があまりに有名なので、一発屋、またはワンヒット・ワンダーと思われているかもしれませんが、決してそうではありません。1864 年生まれで1944年没ですから、天寿をまっとうしたといってもいいのではないでしょうか。作品も晩年まで残しています。

 

今回は版画展ということで、リソグラフ、エッチング、ドライポイントなどの作品ばかりが集められています。とはいえ、ムンクさんは同じモチーフやテーマを繰り返し作品にしたので、有名な「叫び」や「マドンナ」などの版画版も展示されています。

 

ムンクの描く人々は「叫び」に描かれている男をほぼ唯一の例外として、感情を失くしたように無表情です。幽界だかパラレルワールドだか、とにかくどこか別の世界からこの世に迷い込んで途方に暮れたように佇んでいます。そうでなければ北京ダックのようにうなだれていて、その人に大丈夫ですかと声をかけると、「こんな顔でしたか?」とのっぺらぼうが顔を上げそうです。ぼやけた大きな穴のような目だけがかかれた顔もあって、こんな顔を日本の漫画でもみたことがあるような気がするけど、誰だったかな。

 

人の心の内側にある深い溝を覗き込むような沈鬱な絵ばかりかなと思っていたら、セクシュアルなイメージの絵もかなりありました。「マドンナ」なんかがそうなわけですが、セックスの後でまどろんでいるような表情を見せるマドンナの版画にも (いやまあ聖母はバージンだったと思うんだけど)、左下にわざわざ白いスペースを作って唐突に胎児の絵が書いてあるんです。他の絵にも、なぜか知らんけど、脈絡もなく胎児と精子を周辺に書き込んだりしていて、どうしてもそれはそこに描かなければいかんかったんかと、ムンクさんを問い詰めたい気がします。

 

展示を見終わって、階下に降りてミュージアム・ショップに寄りました。そしたら、こんなキャラクター・グッズが置いてありました。

 

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もう、実存的な困難や不安に怯えているものとばかり思っていた「叫び」の主人公も、こんなゆるキャラにされたんじゃ台無しです。あまりに華麗なイメージ・チェンジぶりに一体購入してしまいました。お腹を押すと音も出ます。こんな感じ (音出ますので注意)。

 

 

初めて知ったんだけど、「叫び」に描かれている男の人は実は叫んでないんだって。突然、耳を聾するような終わりのない叫び声が聞こえてきて、耳を塞いでいる男を描いたのがこの絵なんだって。知ってた?

 

ムンクの版画展は 12 月 6 日まで。