金曜日にみちゃんからお誘いがあって、コーエン兄弟の新作「A Serious Man」のタダ券があるよって。行く行くって即答で、土曜日の午前中からIFIで見てきました。
コーエン兄弟お得意のオフビートなブラックコメディーです。アメリカの1950年代のユダヤ人コミュニティーが舞台になっています。おもしろかった。お勧めです。
「浮世」で弁当を食べた後、ユダヤつながりで、ちーさんに教えてもらったアイルランド・ユダヤ人博物館に2人で行くことにしました。でも、行ってみたら、オフシーズンは日曜しかオープンしていないのだった。仕方ないので近くの「Foodie Buddha」というニューエイジっぽい自然食料品屋さんでお茶して帰ってきました。
土曜日の次の日である今日は日曜なので、改めて1人で行ってきた。
ユダヤ人博物館の前には、前回の日記に書いた日産フィガロが停まっていました。何というシンクロニシティー。
場所はポートベロ (Portobello) の住宅地で、テラスハウスの二軒をぶち抜いた形で一階が博物館、二階がシナゴーグ (教会) になっています。知らなかったんだけど、ポートベロは移民してきたユダヤ人がたくさん住んでいた地域だそうだ。
一階の博物館には、写真、新聞の切り抜き、冊子、記念品なんかが所狭しと並べてあります。ダブリンのシナゴーグやラビについての宗教的なもの、ユダヤ人が受けた差別に関するものもあったけど、ユダヤ人のダブリンでの生活、文化・スポーツ活動、商業活動など、普通の人たちがどうやって日々の暮らしを楽しんでいたか、あるいは日々の苦悩を切り抜けていたか、に関する展示の方が、移民の生活感に親しみが湧くせいか、興味をそそられたのでした。
ジェームズ・ジョイスが「ユリシーズ」の中でダブリンのユダヤ人に触れているらしくて、そのコーナーもあり、日本人が書いた論文も展示されていました (A4 の表紙しか見えなかったけど)。
さて、いよいよ二階のシナゴーグに上がろうとすると、年配の女性がガイド役を買って出てくれた。ボランティアの人らしい。彼女の説明によると、アイルランドにはまずロシアから逃れてきたユダヤ人がいて、ちゃんとしたシナゴーグもあったらしいんだけど、19世紀終わりから20世紀の初めにかけて東欧から乏しいユダヤ人たちがたくさんやってきて、その人たちがちゃんとしたシナゴーグじゃ居心地が悪いというわけで (同じ宗教でも仕来たりとかが違うとやっぱりやりにくいらしい)、民家の二階に庶民的なシナゴーグを作ってしまったとのこと。以前は、8つくらいあったんだけど、今残っているのはここだけだそうです。
私はブダペストやプラハでもシナゴーグを見学させてもらったことがあって、それらは宗教施設らしい荘厳さを備えていたのだけれど、こちらのシナゴーグは敷居の低さが特徴です。日本でいうと、近所の荒神さんの隣に建てられた地区センターみたいな雰囲気があります。
部屋の片隅にはウェディング・キャナピーが置いてあって、新郎新婦の衣装を着たマネキン人形が晴れがましく並んでいます。ユダヤ人が結婚するときは、このキャナピー (テント) の下で式を上げるらしい。普通だとこのキャナピーは結婚式のときだけ組み立てるそうなんだけど、このシナゴーグでは出しっぱなしで展示しています。
文字盤がヘブライ語の時計が掛けてあって、これはちょっと欲しいと思いました。
もちろんシナゴーグには欠かせない巻物 (ちゃんとした名前がわかりません、Scroll って言ってたけど) が置かれているところや、独特の形をした椅子が配置されているところなんかは他のシナゴーグと同じです。
後部はこれまた小さなメモラビリア展示場になっていて、整理整頓の苦手な店主がやってる骨董屋さんみたいにいろんな小物が脈絡もなく (と私には見えた) ショーケースに放り込まれていました。
今日、一番印象に残ったのは、ガイドしてくれた女性が醸し出す「私たちのことをもっといろんな人に知ってほしい」という弛むことのない意思です。彼女の口調は人生を楽しむことが大切であることを知る人のそれであり、明るく、オープンで、押しつけがましくもありません。
私が「A Serious Man」っていうジューイッシュがテーマの映画を見たんで、今日ここに来たんだという話をしたら、タイトルを聞き直し、上映してる映画館 (たぶんどこでもやってる、来週末から) を確認して、観に行く気満々のようでした。もう一度言いますが、お勧めの映画です。
帰り道では、車の上で猫が気持ちよさそうにしていました。