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ダブリン・バス 46A とのお別れ

 

アイルランドで冬になるとラジオからよく流れてくるのはポーグスの『Fairytale of New York』(ニューヨークの夢) ですが、夏になると聞こえてくるのがバガテル (Bagatelle) の『Summer in Dublin』です。

 

『Summer in Dublin』は1980年のヒット曲。何気なく聞くと失恋の歌のようにも聞こえますが、歌詞の「you」をダブリンの町ととらえるとダブリン賛歌と見ることもできます。都会の喧騒に疲れて静かな場所に逃げ出す主人公。しかし、静けさに飽きたらまた帰っていくだろう。そのときお前はまだそこにいてくれるだろう、みたいな歌詞です。すみません、私が要約するとダサいですが、歌詞はちゃんとかっこいいです。

 

1980年といえばまだアイルランドは不況のまっただなかでした。ダブリンの町なかも裏寂しく、公害もひどかったようです。リフィー川からは工場廃液の悪臭が漂い、石油高で政府が石炭使用を奨励したものですからスモッグも立ち込めていました。グラフトン・ストリートはまだ歩行者天国ではなくてバスが走っていました。

 

歌の中で主人公はシティ・センターからダブリン・バスの46Aに乗りダンレアリに向かいます。バガテレのソングライターでヴォーカリストのリアム・ライリーによれば、歌詞に書いたことはすべて実際に彼の身に起こったことだそうです。バスの中で酔っ払いから金持ちになる方法をむりやり聞かされたのも実際にあった話。バスを降りた後、ライリーはダンレアリのふ頭で一夜を明かします。その前日、ライリーはブームタウン・ラッツのライブを見に行って、DJがボブ・シーガーの『Rock and Roll Never Forgets』をかけるのを聞いていました。それも歌詞に反映されています。

 

そんなわけで、46Aは『Summer in Dublin』と共に甘酸っぱい思い出となってダブリンの人々の心に焼き付いているわけですが、なんと来月この46Aが廃止されるのです。フェニックスパークとダンレアリを結ぶこの46Aルートの歴史は1926年にまで遡ります。100年近い昔ですね。当時は小さなシングル・デッカーのバスだったそうです。

 

12月8日から46AはE2という番号に置き換えられます。ルートも変わり、ダンレアリとバリマンのIKEAをつなぐものとなります。現在はピーク時で1時間に17本走っていますが、これは12本に減便されます。ただし、24時間運行となるそうです。

 

『Summer in Dublin』の演奏は、1980年にRTE がメイヨーのキャッスルバーでのライブを撮影したものが残っています。観客の盛り上がりを含めて臨場感たっぷりの映像となっています。こちらからどうぞ。

 

 

参考資料:
I remember that summer in Dublin: Living the life of Reilly in song | Irish Independent

I remember that summer in Dublin. . . and it was bloody awful - Lifestyle, Frontpage - Independent.ie

Farewell to the 46A on Liveline

RTÉ Archives | Entertainment | Bagatelle In Castlebar

 

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