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カンボジア政府に大目玉をくらったアイルランド人アーチスト

 

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ポルポト時代の強制収容所で殺された犠牲者の写真を無断で使用してカラー化し、しかもデジタル加工で表情を笑顔にするという作品を発表したアイルランド人のアーチストがカンボジア政府に大目玉をくらっています。

 

cambodianess.com

 

この収容所は現在はそれがあった地名をとってトゥール・スレンと呼ばれていますが、当時は存在そのものが秘密であったため、名前すらなかったといわれます。2年9か月の間に14000~20000人が収容されたとされており、生きて戻ってこられたのは8人でした。

 

この作品を発表したのは、アイルランド人アーチストのマット・ラックリー (Matt Loughrey) さん。ふだんは、ご先祖様のモノクロ写真をカラー化して笑顔にするというサービスを提供している方のようです。

 

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アメリカに VICE という主に若者向けのオンライン雑誌があって、そこにラックリーさんのインタビュー記事が掲載されました。4月9日の話です。ラックリーさんの説明によれば、彼ら (犠牲者たち) の歴史に新しい命を吹き込むため (revitalize) に写真を修整したそうです。

 

しかし、多くのカンボジア人は、この写真は道徳的に受け入れられないし、クメール・ルージュの犠牲者に対する侮辱であると考えました。

 

カンボジアの文化芸術省 (MCFA) は、4月11日、記事と写真をウェブサイトから削除しなければ法的手段に訴えると同誌に抗議。VICEはその日のうちに記事の掲載を取りやめました。

 

MCFA:「カンボジア文化芸術省は、こうした改ざんを受け入れない。マット・ラックリーのこの作品は、犠牲者の尊厳やカンボジアの歴史の現実に深刻な影響を与えるものであり、こうした写真の法的な所有者であり管理者であるトゥール・スレン虐殺博物館の権利を侵害していると考える」。また、事前にラックランさんからの連絡は一切なかったそうです。

 

同博物館 (かつての収容所があった場所に建てられている博物館です) のディレクターであるハン・ニセイ (Hang Nisay) さんによれば、犠牲者の写真を載せた同博物館のウェブサイトが公式に解説されたのは今年の1月。遺族の方が犠牲となった親族を見つけるのを助けるという目的だったそうです。ラックリーさんは、許可もなくそのウェブサイトから写真をダウンロードしたに違いない、と。

 

VICE の記事が掲載されたすぐ後に、Change.org で記事の取り下げを求めるオンライン署名が開始され、記事が取り下げられたことから、現在は VICE の謝罪を求める署名集めに変わっているようです。その説明文には、「私たちの歴史のトラウマから利益を得ようとするラックリー氏の試みを拒絶する」とあります。

 

まあさすがに不適切ですね、と私も思います。少なくとも遺族の許可を得ることは必要だったでしょう。

 

 

 

 

2021/04/14追記

アイリッシュ・タイムズにも記事の載っていたのでリンクを張っておきます。

www.irishtimes.com

 

www.irishtimes.com

 

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