ダブリンのサウス・サーキュラー・ロードに巨大な廃工場があるのをご存じの方も多いと思います。
これは、1935年に建てられた Player Wills 社のタバコ工場です。 使われなくなってからかなり時間は経過していて、私がダブリンに来た90年代前半にはもうもぬけの殻だったような気がします。
この場所の再開発の計画が持ち上がっていて、デベロッパーは2018年にこの敷地を購入したアメリカのハインズ (Hines) という会社。問題になっているのは、19階建てという高さの問題もあるのですが、ここに建設されるアパートの3分の1を co-living という形態にしようとしているところ。
co-living というのは、4 ~ 5 つのワンベッドの住人が台所とリビングを共同で使うというもの。つまり、学生向けのアパートです。
それで、co-living という形態のアパートを作るのは去年の12月に事実上禁止されたのですが、禁止される前日にハインズ社が建設許可申請を出したのです。
co-living が禁止された理由は、その地域に住んでいる人にとっては、自分たちが移り住めるような住居を作ってほしいわけです。ダブリン8区のニューマーケットのあたりには、co-living の建物が乱立して、去年あたりちょっと問題になっていました。
ハインズ社の言い分によりますと、もともとは co-living のユニットを作る予定はなかったそうです。この建物は歴史的な建物として保護する動きがあるのですが、その場合でも、これまでの通例からいって、正面の壁だけを残せばよかった。それが、建物全体を残すことになったので、co-living のユニットを作るしかなくなったとしています。技術的な理由も述べているのですが、ちょっと私には理解できないことが書いてあるので省略します。
野党の議員さんなんかは、co-living が唯一の解決策だとは受け入れられない、などとしています。
で、まあデベロッパーにとっては、co-living が単位面積あたりの利益率が高いらしいです。建築家で住居政策アナリストのメル・レイノルズさんによれば、一般的な住居に比べて最大8倍の利益があがるそうです。