今日はグッド・フライデーでございます。
アイリッシュ・タイムズ紙に、今は廃れてしまったグッド・フライデーの伝統的な習わしを10個集めた記事が出ていました。記事を書いたのは、コークの成人大学で文化、歴史、民俗学などを教える Shane Lehane さんです。私もまったく聞いたことのないものばかりでした。
- 髪の毛を切る、洗う。
グッド・フライデーに髪を切ると、髪が濃く、長く伸びるので、女性は進んでこの日に髪を切っていたそうです。また、グッド・フライデーに髪を洗うと、頭痛を避けることができると考えられていました。まあ、昔ですから、毎日は髪を洗わなかったのでしょう。
- 髭をそらない。
男の人はグッド・フライデーに髭をそらないようにしました。キリストが十字架にかけられた日に間違って頬を切って血を流すのはアンラッキーだと考えられていたからです。また、昔はベーコンを作るのに天井の垂木のフックに肉を掛けておいたそうですが、グッド・フライデーにはこれも外したそうです。これも肉を垂木に掛けるというのが磔 (はりつけ) を連想させたからです。
また、鍛冶屋さんや大工さんがこの日は仕事をしなかったのも同様の理由です。はりつけのときには、のこぎりやハンマーを使ったり、釘を打ったりするわけですから。また、木を燃やしたり、裂いたりするのも禁忌でした。
- 鋤で庭の隅に穴を掘ってじゃがいも植える。時間があればオート麦、キャベツ、カブも。
逆に農家は忙しい。グッド・フライデーに植えた植物はなんでも育つと考えられていたからです。グッド・フライデーが3月に来る年はこの日からじゃがいもを植えていました。4月に来る年は、この日に終わるようにじゃがいもを植えたそうです。また、キャベツやカブを植える習慣もあったそうです。
- ガーリックを植える。冬に咳が出るときの薬として。
グッド・フライデーに植える植物としてはガーリックも人気です。午前中に植えたガーリックには病気を癒す力があるとか。咳止めとして使えるほか、酷い咳にはヤギの乳とまぜて飲むと効果てきめんだったとか。また、雌鶏に与えると病気除けになり、牛に与えると血がきれいになると信じられていたそうです。
- 裸足になる。
特に子供たちですが、靴と靴下を脱いで、この日から夏のあいだ、裸足でいたそうです。グッド・フライデーではなくて5月1日からそうした家庭も多かったそうですが。そうすることで、ケガなどから守られ、風邪もひかなくなると信じられていました。
子供の関係でいいますと、グッド・フライデーに生まれてイースター・サンデーに洗礼を受ける赤ちゃんは、サナダムシに対する治癒の力があると考えられていました。しかし、治癒の力を持つためには、洗礼のときに、赤ちゃんはサナダムシが死ぬまで手に持ってないといけないということですから、これは大変です。
- 足を洗う。イボや魚の目の治療のためにその水を取っておく。
これは洗足木曜日 (イースターの直前の木曜日) にキリストが12人の使徒の足を洗ったと言う福音書の記述に基づくものです。
- 黒い雌鶏を見つけ、その日最初の卵を産むまで待つ。その卵に焦げた杖で X と印を付ける。イースター・サンデーにこの卵を茹でてみんなで食べる。
レントの期間は卵を食べてはいけないことになっているので、プロテイン豊富なこの食べ物を食べるのが儀式の1つとなっているわけです。家庭によっては、黒い雌鶏でなくてもいいし、焦げた杖じゃなくて鉛筆で印をつけてもいいそうです。そのへんはそれぞれ。病気や頭痛を避けることができると信じられています。また、グッド・フライデーに生まれた卵は売らないこと。売ると商売がうまくいきません。また、グッド・フライデーの生まれた卵はけっして腐ることがないと言われています。
- 礼拝所に裸足で行って、女性は髪を下ろし、はりつけになったキリストの5つの傷にキスをする
昔の話ですが、この日の大きな宗教的儀式として、キリストが死んだとされる午後3時に神父が大きな十字架をもって祭壇に立ち、人々は順番にキリストの5つの傷にキスしていくというのがありました。このとき、人々は裸足で、女性は髪を覆わずに髪を下ろします (当時の女性はだいたい髪をスカーフで覆っていました)。昔、アイルランドのお葬式では、参列者の中で特に老齢の女性は髪の毛を下ろしていたようです。そうして泣くことで、異世界につながる存在としての象徴的な役割を担っていたようです。
- オートミールを水に浸してソウェンズ (Sowens) を作る
ソウェンズというのはオートミールを水に浸して発酵させた食品です。これも節制のひとつということで、ミルクの代わりに用いるんですね。マッシュポテトを柔らかくしたり、ミルクやバターミルクの代わりにパンに入れたり、イラクサ、カブ、キャベツ、ニシンなどを入れてお粥にしたりするそうです。
- 海に行ってカサガイと海草を拾い、ブラックファストの軽食を作って食べる。
レントは基本的に節制・我慢の時期なのですが、特にグッド・フライデーは厳しい節制をするので、それがブラックファスト (Black Fast) と呼ばれるわけです。3回とも軽食にするとか、正午 (はりつけになった時刻) に1回だけ食べるとか、正午までは何も食べないとかですね。
それで、昔は金曜には肉ではなくて魚を食べるというのが一般的な習慣だったのですが、漁村ではいつも魚を食べてますから、グッド・フライデーには魚ではなくて貝や海草を食べて節制しましょうということです。また、この日に漁に出ることはご法度でした。海が死体を渇望していると考えられていたからです。グッド・フライデーに浜で集めた食材はすべて健康によいと信じられていました。
以上です。