ストライプっていうオンライン決済の会社があるのをご存じの方も多いと思います。この会社の本社はサンフランシスコなんですけど、創業者はアイルランドのティペラリー出身の兄弟なんですよ。
兄のパトリック・コリソン (写真右) が32歳、弟のジョンが30歳です (この写真はおそらく数年前に撮影されたもの)。
パトリックは2005年にアイルランドの学生向け科学分野のコンペティションであるBTヤング・サイエンティスト大会で優勝しています。
パトリックは2007年にシュッパ (Shuppa) という会社をジョンと共に立ち上げます。これは、イーベイのオークションの管理を容易にするためのソフトウェアを開発する会社だったようです。エンタープライズ・アイルランド (アイルランドの経済企画庁みたいな役所) がこの会社に資金援助をしなかったので、2人は会社をカリフォルニアに移します。そこで、2人のオックスフォード卒業生の若い企業家と合流して、社名をオークトマティック (Auctmatic) に変えます。
2008年のこの会社をカナダの会社に売却したことで、コリソン兄弟は一夜にしてミリオネアになります。2人ともまだ10代でしたから、これは話題になりました。
そして、2010年にストライプを立ち上げるわけです。出資者にはイーロン・マスクやピーター・ティールなどの大物が名を連ねています。
設立から10年ほどしか経っていないストライプですが、その成長は目覚ましいものがあります。株式は未公開なのですが、現在の評価額は950億ドルとされています。これは、スナップ (写真共有アプリのスナップチャットの会社)やズームなどの巨大テック企業を凌ぐ金額です。また、ゼネラル・モーターズ、ターゲット (小売り)、コノコフィリップス (石油エネルギー) などの時価総額も上回ります。
今回新聞記事になったのは、新しく6億ドルの投資資金を獲得し、その中にはアイルランド政府のアイルランド戦略的投資資金の 4200万ユーロも含まれるかららしいです。ストライプは既にダブリンにインターナショナル・ヘッドクォーターを構えていて300人を雇用しているのですが、今後5年間で少なくとも1000人を追加で雇用する計画だそうです。
オンライン決済システムと言えば、一番有名なのはペイパルではないかと思うのですが、ストライプの有利な点はどこなのか。グーグル検索してみますと、うまくまとめてくださっているサイトが見つかりました。
シェアを伸ばしている理由は、導入の手軽さと手数料の低さ。そして、決済画面に移行しなくていいということ。スマホでモノを買うとき、決済が面倒なのでそこで購入をやめてしまうということが非常に多いそうです。そのストレスを軽減することで、離脱率を抑えるということらしいです。
ストライプは日本では2016年10月にサービスの提供が始まりましたが、同社のウェブサイトによりますと、SmartHR、DeNA、Cookpad、日経、Shopify、Zoomなどでもストライプの決済システムが利用できるようです。
上にリンクを張ったウェブサイトによりますと、「利用前の審査もスピーディで、固定の利用料も発生しないところはStripeの大きな魅力であり、その点がスタートアップや中小ECサイトに選ばれる理由となっているのでしょう」とのこと。
それで、ストライプは今年中に株式公開 (IPO) が行われるのではないかと噂されています。そうなれば、2021年最大の IPO となる可能性もあります。
株式については私は広瀬隆雄さん (じっちゃま) のツイートやYouTube動画を参考にしているのですが、広瀬さんも今年のIPO候補の中でストライプを星5つと最高の評価を付けています。
【今後のIPOレーティング 1月21日現在】
— じっちゃま (@hirosetakao) 2021年1月20日
ストライプ☆☆☆☆☆
マーケタ☆☆☆☆☆
フリップカート☆☆☆☆
ロブロックス☆☆☆☆
スターリンク☆☆☆☆
バンブル☆☆☆
コインベース☆☆
ロビンフッド☆☆
コリソン兄弟は生まれはティペラリーなんですが、これは両親が一時期ティペラリーの田舎の村でホテルとレストランを経営していたからです。お母さんは科学の修士号を持ち、お父さんもエンジニアのいわば理系一家。兄弟は、小学校はティペラリー県ニーナ (Neanagh)のゲール語学校。中高はリムリックのキャッスルトロイ・カレッジです。パトリックはMITに進学しますが、ビジネスに専念するため中退。ジョンはハーバードを卒業しています。アイルランド西部のこのあたりの出身で、兄弟そろって20代でミリオネアになったのは、クランベリーズのホーガン兄弟以来ではないでしょうか。