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ブックメーカー業界がすんでのことで身をかわした史上最高額の銃弾

 

 

昨日、株の話を書いたのは、それを枕にしてこっちの競馬の話を書きたかったからなんだけど、株のことを調べてると面白くなってしまって、それだけで1記事書いてしまった。

 

ゲームストップの話を聞いて私が思い出したのは、以前に読んだ『ブックメーカー業界がすんでのことで身をかわした史上最高額の銃弾』というアイリッシュ・タイムズの記事です。小口投資家/一般ギャンブラーが束になってプロを苦しめたという点が共通しているので。今日はそのことを書きたいと思います。

 

www.irishtimes.com

 

イギリスでチェルトナム・フェスティバルっていう障害競馬レースがあって、これは賞金額で言えばグランド・ナショナルに次いで大きな大会です。4日間開催されるんだけど、だいたいセント・パトリックス・デイにかかっているので、アイルランドでも人気があるし、現地に見に行く人も多い。

 

2015年の大会では、ウイリー・マリンズ (Willie Mullins)というアイルランドの調教師が何頭もの馬を素晴らしい状態に仕上げてきました。そのうちの 9 頭が本命です。3 月 10 日の初日には、彼が調教したドゥーヴァン (Douvan)、エン・ダ・ソー (Un De Sceaux)、フォーヒーン (Fauheen)、アニー・パワー (Annie Power)の4頭が出走します。4頭とも一番人気。騎乗するのは、これもアイルランドの著名ジョッキーであるルビー・ウォルシュ。

 

こういう大きな競馬って、普段は競馬なんて見ない人や、賭け事なんてしない人も、楽しみのためにブックメーカーに行ってちょっと賭けたりするわけです。で、そういう人たちは楽しむことが主目的なので、手堅く勝ちたいというよりも、大きな夢を見たいわけですよ。小さく賭けて、可能性は少なくても当たればでかい、みたいなやつです。

 

レースごとに本命馬に賭けても2倍にもならない。それじゃあ面白くない、ということで、ブックメーカーが用意するのがアキューミュレーションという賭けです。すなわち、4つのレースで指定の馬がすべて1着になれば勝ちという賭け。マリンズが調教した4頭がそれぞれのレースですべて勝つという賭けの倍率は、1月の時点で 44 倍でした。

 

ウォルシュ騎手の話:「個別に馬を見ていけば、レースで勝って当然と思える。しかし、全体として考えれば、『チェルトナムは強い馬がいっぱいいるし、これまで1日で4回勝った騎手はいない』と思わざるをえない。そういう意味では状況は複雑なのだが、レース単位で見ればこれらの馬が勝つと思うよね」

 

アイルランド人調教師とアイルランド人騎手による四冠なるか、という賭けですから、アイルランドでは当然盛り上がります。そして、その熱はイギリスにも伝わり、大勢の個人客がこのアキューミュレーションに乗っかります。

 

ブックメーカーは、プロのギャンブラーに関しては目を光らせています。プロが大金を賭けようとしたときは、ブックメーカーがリスクが大きいと判断すればその賭けを断ることができます。しかし、大勢の個人が少額を賭けてくる場合には、オッズを下げる以外になすすべはないのです。そして、日本の競馬と違って、ブックメーカーでは客が賭けた時点での倍率が (その後、倍率がどのように変動しても) 有効なのです。

 

ラドブロークスというブックメーカーのヘイリー・オコナー氏によれば、この4頭のアキューミュレーションはヤバいぞ、という声は社内でも早くからあったそうです。しかし、オコナー氏は、「この4頭を良い状態に仕上げてチェルトナムに連れてくるのだって相当難しいぞ」と楽観視していたようです。

 

さて、レース当日。ドゥーヴァン、エン・ダ・ソー、フォーヒーンの3頭は予想通り勝利を納めます。残るはアニー・パワー。ウォルシュが今日騎乗する4頭の中でも鉄板の本命とされる牝馬です。記者席はがぜん騒がしくなります。記者はブックメーカーの担当者にいくら損失が出るのかを聞き出そうとします。レースが始まる前に予定稿を本社に入れる記者もいる始末。この日最大のストーリーなのです。

 

レースが始まり、アニー・パワーは中団に構えます。最後から3つ目の障害を越えたあたりから彼女はペースを上げ、先頭に躍り出ます。そのまま最後から 2 つ目の障害を飛び越え、最後の障害に向かいます。

 

ウォルシュ騎手「彼女は遠くから飛びすぎた。もう一歩進んでから飛んでもよかった。きつくなっただろうが、十分なスペースはあったはずだ。飛び出しも低かった。ハードルの一番上に足を引っかけた。それでも私はまだいけるんじゃないかと思っていた。足を伸ばして着地できるんじゃないかと」

 

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アニー・パワーは首から落ち、ウォルシュ騎手は落馬。優勝に輝いたのは、彼女と同じ厩舎のグレンズ・メロディーでした。幸いなことにアニー・パワーにもウォルシュ騎手にも怪我はありませんでした。

 

さて、アニー・パワーが最後の障害を難なく飛び越えていたなら、ブックメーカーはいったいいくらの損失を出していたのか? 記者は関係者に取材し、匿名を条件に回答を引き出します。その関係者は、業界全体で約4000万ユーロ (誤差は±500万ユーロ) と見積もっています。

 

ゲームストップの株は先週末の時点でも会社の業績とかけはなれた高値で推移していて、どのように着地するのかまだわかりません。ヘッジファンドの巻き返しはあるのか? チェルトナムではプロのギャンブラーは命拾いをしたわけですが、アメリカの株式市場ではどうなるのか。野次馬的には非常に興味をそそられます。

 

 レースの模様はこちら↓

https://www.youtube.com/watch?v=15pG2ZdwTP8

 

 

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