チェルトナム・フェスティバルと言えば、イギリスで最大級の競馬の大会です。だいたい、日程の中に3月17日のセント・パトリックス・デイがひっかかってくるんですよね。
で、スポーツの話でイングランドとアイルランドで比較しますと、イングランドが強いことが圧倒的に多い。アイルランドが散発的に勝つことはあっても、持続的に優位に立つという競技は少ない。ラグビーなんか頑張ってるほう。
ところが競馬は別なんですね。アイルランドはご存じの通り世界有数の馬産地ですから、競馬は一貫してアイルランドが強いと言っても過言ではないわけです。
さて、アイルランドにはパディーパワー (PaddyPower) というブックメーカーがあるのですが、ここは、ときとしてどぎつい風刺的な広告を打ちます。チェルトナム・フェスティバルに向けた今年の広告では、俳優のコルム・ミーニー (スター・トレックとかに出演) をメイン・キャラクターに据えて、イングランドとアイルランドの競争心を (というか、アイルランドからイングランドへの一方的な競争心) をコミカルに描写しています。
この広告が面白かったので、全部訳してみました。私には理解不能な部分もありますので、分かる方は教えてください。
(翻訳ここから)
Look, we need to have a chat. Neighbour to neighbour.
ちょっと話をしないといけないね。お隣さん同士だからね。
This is for laughing at the way we say thirty-three and you can’t even say Siobhan.
君たちは私たちが33と言うのを笑うが、君たちだってSiobhanすらまともに発音できないじゃないか 。
(アイルランド訛りでは th が t になるので、tirty-tree と言っているように聞こえる。Siobhan (シボーン) は一般的なアイルランドの女性名)
For claiming Saoirse and Katie and Niall on your own.
シアーシャ (ローナン: 女優)、ケイティー (テイラー: 女子ボクシング・チャンピオン)、ナイル (ホーラン: ワン・ダイレクションのメンバー) をイギリス人だと言ったりもしたね。
(この3人については、UKのメディアが過去に間違えてイギリス人だと言ったことがある)
For ordering a black and tan in front of us without blinking.
ブラック・アンド・タンを瞬きもせずに私たちの前で頼んだり。
(black and tan はここではラガーとスタウトをミックスするビール・カクテル。元々は足の毛の色と胴体の毛の色が違うテリア犬のこと。しかし、アイルランドでは別の意味があって、1920年ごろにアイルランドの独立運動を抑えるために臨時で雇用された英国警察予備隊を指す。褐色のズボンと黒っぽい上着を着用することが多かったのでこの名前がある。残虐行為を働いたのでアイルランドでは非常に評判が悪い。Without blinking は「感情を表さずに」の意)
And claiming your grandfather was from Clare. He was a landlord.
で、君のおじいさんはクレア県の出身だっていうけど、地主だったじゃないか。
(クレア県はアイルランドの県。地主は支配階級だったと言うこと)
For serving baked beans with a fry.
フライと一緒にベークト・ビーンをよそったり。
(ちょっとよくわからない。ブレックファストの話をしていると思うんだけど、アイリッシュ・ブレックファストでもビーンは付いてくること多いしな。揚げ物と別々にして出せ、と言っているのかな?)
For ruling words like banter. There stops before your moon cracks.
(これはまったくわからない。聞き取りもまちがっているかも。分かる方、教えてください)
For it’s coming home that’s not everything can come home.
W杯のトロフィーが戻ってくるなんて言ってたけど、戻ってこないものは戻ってこない。
(2018年のサッカーW杯でイングランドはかなり勝ち進んで、トロフィーがサッカーの母国に帰ってくるぞ(it’s coming home)などと盛り上がったのだが、結局準決勝で負けてしまった)
For geo-blocking the iPlayer and dragging us into your messy divorce.
iPlayerを位置情報でブロックするし、離婚のごたごたには引きずりこむし。
(iPlayerはBBCのオンラインサービス。アイルランドからのアクセスはブロックされる。離婚はもちろんブレグジットのこと)
For leaving us in the worst parts of your airports.
空港の一番遠いところに私たちを押し込めているし。
(ヒースロー空港などでは、アイルランド行きの便はだいたい一番不便なところにあるターミナルから出る)
And chasing out the first royals that were ever any fun.
おもしろい王族が初めて現れたかと思ったら、すぐに追い出してしまった。
(ハリーとメガンのこと)
And for not caring as much as we do about Ireland versus England.
そして、アイルランド対イングランドを私たちほど気にかけていないこともな。
Every year we get one chance. Our horses winning big on your turf.
しかし、毎年一度だけ私たちにもチャンスが来る。アイルランドの馬が君たちの縄張りで大勝するんだよ。
(翻訳以上)
最後に競歩の選手が飛び出していくんだけど、この人、ロンドン五輪で銅メダルをとったロバート・ヘファーナン本人だよね。たぶん。