たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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Donkey job と雪かき仕事

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単調で誰でもできるような仕事のことを Donkey job とか Donkey work とかいいます。Donkey にはロバの意味のほかに「間のぬけた人」の意味もありますから、間のぬけたな人でもできるような仕事という軽蔑的な意味がこめられています。

また村上春樹の話になって恐縮なんですが、「雪かき」(Snow shoveling) っていうのは彼がよく使う言葉です。雪が降った次の日に、家の前を雪かきして、人々が安全に道を通行できるようにする作業です。これは誰にでもできる単純な作業だし、人に褒められることの少ない地味な行為ですが、誰かがやらなくてはならないし、確実に世の中に役立つ作業です。

こうしてみると、人によって同じ作業が Donkey job に見えたり、雪かきに見えたりするのかもしれません。サッカーのオシム元日本代表監督は、チームには Water Carrier (水を運ぶ人) が必要だ、と言いました。サッカーで Water Carrier という言葉を最初に使ったのは元フランス代表&マンチェスター・ユナイテッドのエリック・カントナ選手です。カントナ選手は、フランス代表チームの同僚だったディディエ・デュシャン選手をコケにするためにこの言葉を使いました。ヘタで、自分よりうまい選手にボールをパスするためだけに存在する選手という意味です。しかしボスニア・ヘルツェゴビナ人の元日本代表監督は肯定的な意味でこの言葉を使っているのがわかります。報われることの少ない仕事を黙々とこなす選手がチームには必要だと言っているのです。「水を運ぶ人」っていうのはコミュニティーでは絶対必要な人ですから。

考えてみれば、スター選手であっても試合中のほとんどの時間は雪かきをして過ごしているわけです。ロビー・キーン選手は得点を決めたその瞬間だけがテレビで取り上げられますけど、それ以外の 89 分間は、相手ボールをチェイスしたり、DF とぶつかりあって位置取りを競ったり、DF を釣る動きで味方選手のためにスペースを作る動きをしているわけです。ラグビーのオドリスコル選手だって、トライの瞬間だけが注目されますが、それ以外の時間はまさしくロバのように相手選手にタックルを繰り返しているわけです。あまりに負担が大きいので雪かき仕事を免除される選手もいますが (アメフトの QB、野球のピッチャー、彼らほどでないにせよラグビーのスタンドオフとか)、雪かき仕事をしない選手はチームメートから信頼されないでしょう。それは、雪かきをしない家の人がコミュニティーからどう思われるのかというのと同じです。

私はレベルは低いなりに真面目にソフトボールをやってますけど、他の選手のバックアップに入ったり、自分はアウトとわかっていながらも送球を妨げるためにスライディングしたりなど、ソフトボールでも雪かきの仕事はいくらでもあります。こういう仕事を Donkey のやる仕事などと言われてしまうとがっかりしてしまいます。

(写真は紀元前13世紀のエジプトの壁画に描かれたロバ)