たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

Integration と統合

前になんかの掲示板で「コンフロンテーション」ってカタカナで書いたら、それぐらい「対立」って日本語で書けよ、って突っ込み入れられたことがあります。私もなんでも英語をカタカナにして使っちゃうのはよくないとは思いますが、私にとっては「コンフロンテーション」と「対立」は微妙に、でも決定的に意味が違うんです。英語でConfrontationっていうと、必要なときはそれも必要だよね、っていう認識だからニュートラルな単語なんだけど、「対立」はやっぱりよくないもの、避けるべきものっていう負のイメージがあります。だから、そこのところはどうしても「コンフロンテーション」にしたかったんです。もちろん普通の掲示板だったら使わなかったと思うけど、イギリスに住む人が集まるような掲示板だったので。

また、Respectっていう言葉も訳に困ることがあります。というか、カタカナで「リスペクト」って書くのが一番しっくりくることがある。Respectは、する人とされる人が対等の立場だけど、「尊敬」にするとどうしても上下関係が入るでしょう。「尊重」は、権利や意見に対して使うもので、人に対して使うものではないですよね。たぶん一番近いのは「敬意」なんだけど、やっぱよそよそしいというか、フレンドリーさに欠けるというか。

日本語から英語にするときもそうで、日本語だとサッカーの試合結果に「悲劇」(例: ドーハの悲劇)っていう言葉を使うんだけど、英語だとTragedyは人が死ぬような事故にしか使わない(Hillsborough Tragedyとか)。「悲劇」はもちろん最初はギリシャのドラマ形式のひとつを指してたわけだけど、そこから転じて現実の悲しい出来事を指す言葉としても使われるようになった。だけど、「悲劇、Tragedy」が指すイベントの悲しさの程度には、英語と日本語で差があります。だから「ドーハの悲劇」は「Agony of Doha」(ドーハの苦悩)ぐらいにしといた方がいいみたいです。

最近よく思うのは Integration です。アイルランドも移民が増えましたから、アイルランド社会への移民のインテグレーションという重要な問題をどうするかということが盛んに議論されます。この言葉を「統合」って訳すと感じ悪いんですよ。「日本社会に移民を統合する」。ほらね。すごく傲慢そうに響くでしょ。日本だとこういう場合だいたい「共生」っていう単語が使われるみたいです。ただ、「共生」だとお互いに遠慮しながら干渉しないように暮らしていくっていう印象ですが、おんなじ社会で暮らしていく以上、干渉っていうかインタラクションなしでやっていけるわけないわけです。だからここは、ホストネイションとしての自覚を持って、移民の人たちを自分たちの社会にインテグレートするために積極的に関わるという意識を持つことにしたほうが、移民の人たちにとってもそういう風に働きかけてもらったほうが良いはずだし、ホストネーションの人たちの心理的負担も少ないんじゃないかと思います。「共生」だと、相手の文化を尊重することばかりを言い募られているような気がしませんか?

まあ日本は移民に対してだけでなく日本人の若い人たちにたいしても社会に組み込んでいくっていう意識は低いと思います。でも、ほら、「組み込む」っていう言葉も嫌な響きの単語でしょ。なんかいい言葉ないですかね。

2010/01/09: と思ってたらいい言葉が見つかりました→ http://blogs.yahoo.co.jp/tarascoffeeshop/23643091.html