戦前の映画、「人情紙風船」を見た。28歳で戦病死した山中貞雄監督の遺作。トーキーです。
これ、70 年前の映画だとは思えないくらい面白かったです。ひとつの長屋で起こるとりとめのない複数のエピソードが途中から一気に一本のストーリーにまとまっていく物語の巧みさとか、脇役を含めた登場人物のキャラの厚みとか。原作は歌舞伎狂言らしいですけど。勧善懲悪みたいなわかりやすい話じゃなくて、ポール・ハギス監督の「クラッシュ」みたいにすべての登場人物の良い面と悪い面、強い面と弱い面が描かれるんです。最後も一方の主役は急転直下の結末を迎え、もう一方の主役の運命は観客には語られないまま余韻を残して終わるんですよね。うまいなー。
最近の日本映画見てよく思うのは、脚本にお金っていうかつまり時間がかかってないなー、話がうすっぺらだなー、ということ。たとえば、同じ時代劇の人情物であるところの「たそがれ清兵衛」なんかも、「人情紙風船」に比べると。。。うーん。
これ、このまんまのストーリーでリメークしても結構受けるんじゃないですかね。Streetwise で向こうっ気の強い髪結いの新三と、真面目なんだけどなんだか頼りない素浪人の又十郎を若手の人気俳優に演じてもらって、人はいいけど金にコズルい大家さんはルー大柴さんでお願いします。高田純次さんだとちょっとテキトー方向にキャラが立ちすぎちゃうんで。