Covid-19のパンデミックがアイルランドにもやってきてから、ほぼ1年が経ちました。この12か月の間に、以前はまったく聞くことのなかった言葉が聞こえてきたり、知っていた言葉でも違った意味で使われたりするようになりました。
アイリッシュ・タイムズのコナー・ポープ記者が、ロックダウン下の私たちの暮らしに影響を与えるそうしたフレーズを40個集めてリストにしています。
何か大きなイベントがあれば、新しい単語が生まれるのは世の常です。Dデイ、ウォーターゲート、”We all partied” など (最後のは、アイルランドのバブル時代を象徴する言葉。みんな受かれてたよね、とノスタルジーと後悔をないまぜにして言うと感じが出ます)。
しかし、Covid-19のパンデミックほど多くの言葉を生み出した事件はありません。あまりに多すぎるので、昨年12月、オックスフォード・ディクショナリーのスタッフは、毎年恒例の「Word of the Year (今年の単語)」を選ぶのを拒否したそうです。
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“Like no other…” (他に例のない)
このフレーズは、2020年のあらゆるイベントの枕詞として使われました。確かに、セント・パトリックス・デーもイースターも、パンデミックのせいでこれまでになかったようなイベントになったわけですから、間違ってはいません。しかし、今年はもう3月以降は使えなくなりましたね。 “A different kind of…” とか “unprecedented” も同様です。
Meaningful (意味のある)
パンデミックの文脈でこの単語が使われたのは “Meaningful Christmas”。意味のあるクリスマスを過ごすために、今は我慢してガイドラインを守りましょう、みたいな文脈で使われました。以前は真摯な言葉だったのに、今はちょっと虚ろに響く言葉になりました。
Stubbornly high (高止まりしている)
昔はこのフレーズは失業率に使われていたんですが、今は Covid 関連の数字にも使われるようになりました。
Social distancing (ソーシャル・ディスタンス)
お互いに距離を取ることを人々が覚え始めたのは去年の今頃。1 年がたって、距離を取るのも上手になりました。
Pivot (事業転換)
パンデミックの状況にあわせて、事業の方式を転換すること。小売店がオンラインに移行したり、蒸留所がハンドサニタイザー用のアルコール消毒液を作ったり。
New normal (新しい日常)
「新しい日常」は「異常」ということです。
Click-and-collect (クリック・アンド・コレクト)
ウェブサイトで注文して、お店に商品を受け取りにいくことができるサービス。人の移動が増えるというので、現在のロックダウンでは禁止されてしまった。
Meal kit (食事セット)
お店を開けることのできない飲食店が、食事セットを作って販売しています。購入してレンジでチンすれば、レストラン・レベルの食事が楽しめるというわけです。けっこう複雑で、盛り付け方の動画を用意しているレストランもあるそうです。
Flattening the curve (直線を平坦化する)
医療崩壊しないように、ウイルスの感染を抑えて、グラフの山をなるべく低くするということです。日本でもよく言われていました。
Close contact (濃厚接触)
密接に連絡を取ることは昔はいいことでしたが、最近は「Close Contact」という言葉を聞くと、ぎゃっと叫んで逃げ出さないといけなくなりました。
R number (R値)
ウイルス感染者1人が次に何人に感染させるかを示す「実効再生産数」。Rが1未満なら、流行は拡大しない。昔は学者さんしか使わない言葉だったのに、今ではだいたいの人が意味を分かるようになった。
Contactless delivery (コンタクトレス・デリバリー)
過去12か月間でオンライン・ショッピングに頼る人が増えましたが、運送会社は忙しくなっただけでなく、デリバリの手順も変えないといけません。昔は手渡せばよかったのですが、今はマスクをして、ベルをならし、荷物を下に置き、数歩下がってドアが開くのを待たないといけません。
Outdoor dining (テラス席)
2021年のアイルランドでは、飲食店はテラス席を設けるのが必須になりそうですね。去年の11月でしたか、ロックダウンがいったん緩和されたとき、屋外飲食はOKだというので、寒いのに皆さんテラス席で食事していました。政府はテラス席へのアップグレードを補助するために1700億ユーロの予算を用意したと先週発表したようです。
Non-essential (不要不急)
以前は小売店は小売店だったが、今では必要不可欠の小売店と不要不急の小売店の2種類が存在する。必要不可欠の小売店とは食品、薬など。後にはハードウェアも追加された。しかし、子供のソックスは不要不急なのにワインは必要不可欠なのか、などの議論もあった。
Variant (変異株)
イギリス、南アフリカ、ブラジルなどで変異株が発生しました。感染力が強いのではないかとか、ワクチンが効くのかとか、いろいろ心配の種が増えます。
Long Covid (Covid の後遺症)
Covid に感染し、いったん陰性になった後も、後遺症に苦しむ人がかなりいるようですね。きがかりです。
Green list (グリーン・リスト)
去年の夏、アイルランド人が旅行に行ってもいい国のリストはグリーン・リストと呼ばれていました。リストにはジブラルタル、モナコ、サンマリノが含まれていましたが、これらの国には空港がなく、隣接するスペイン、フランス、イタリアはリストに含まれていなかったので、なんじゃそりゃ、と言われていました。しかし、これらの国でも感染者数が増え始め、グリーン・リストは数週間で実質廃止されました。
Vaccine passport (ワクチン・パスポート)
ワクチン接種を完了した人に証明書 (パスポート) を発行して、これを見せればパブに葉入れたり、旅行に行けたりできるようにする制度。議論が分かれていて、実施するかどうかはまだわかりません。
Two metres (2 メートル)
アイルランドはEUに加盟してからメートル法に切り替えたんですよ。速度制限がメートル法化されたのは2005年。だからメートル法よりヤード・ポンドの方が慣れてるよ、という人もまだいると思いますけど、パンデミックのおかげで2メートルがどれぐらいかというのは、皆さんしっかり頭に思い浮かべることできるようになりました。
Contact tracing (接触追跡)
感染者が出ると、どこに行き、誰と会い、どのくらい一緒にいたか、などを訪ね、感染経路を抑えます。たいへんな作業だと思います。
Herd immunity (集団免疫)
集団免疫が達成されるまでにはまだ時間がかかるでしょう。
Test centre (テスト・センター)
昔はリーヴィング・サート試験やNCT検査を行う場所を意味しましたが、今ではCovid-19の検査をする場所の意味になりました。
Pfizer-BioNTech (ファイザー・ビオンテック)
ビオンテックの名前を聞いたことのある人はほとんどいませんでした。ファイザーはアイルランドでも有名です。コークに大きな事業所があるのと、あの青い錠剤で。今ではファイザー・ビオンテックはコカ・コーラと同じくらい滑らかに人の口から出てくるようになりました。
Oxford AstraZeneca (オックスフォード・アストラゼネカ)
いろいろとケチがついているオックスフォード・アストラゼネカのワクチン。ワクチン界の悪役。
Unexpected shortfall (予期せぬ不足)
サプライチェーンの上流でボトルネックが発生して品物がいきわたらなくなること。
Scamdemic (スカムデミック)
パンデミックにまつわる陰謀論。
Covidiot (コヴィディオット)
Covid と Idiot の合成語。マスクをするのを拒んだり、公衆衛生のガイドラインを守ろうとしない人。
Maskne (マスクニ)
マスクにかぶれてできるできもの。Mask と Acne の合成語。
WFH
Working From Home の頭字語。What Fresh Hell や What F**king Hope の略ではありません。
Bubble (バブル)
ロックダウンで他の家庭を訪問するのは禁止なんですけど、2世帯がバブルを構成して、その家族間は交流してもよい制度。ひとり暮らしのお年寄りを助けたりするのに役立ちます。
Zoom quiz (ズーム・クイズ)
パブに集まってクイズ大会をやるのがパブ・クイズ。それをズームでやるのがズーム・クイズ。
Covid stone (Covid ストーン)
ストーンっていうのは重さの単位です。1ストーンは645gぐらい。メートル法に代わっても今でも体重はストーンで表現するのが一般的 (身長もフィート・インチの方が一般的)。ロックダウンの運動不足で余分に付いた肉。
Home-schooling (ホームスクーリング)
親御さんも最初は張り切って子供にロシア語や折り紙を教えたりしていたのだが、自分も自宅で仕事しながら子供を教えるのは大変だと気付いて、子供が自習できるようになると喜んだ。最近はズームで授業を受けている子も多いのだが、やっぱり寂しいよね。
PPE
Personal Protective Equipment の略。個人用保護具。マスクがないって去年大騒ぎしましたよね。
Superspreader (スーパースプレッダー)
大勢への感染拡大の感染源となった人。無敵感がありますね。
5k (5キロ)
昔は5キロも走ってすごいねーと言われていたが、今では自宅から離れられる距離になってしまいました。
Wash your hands (手を洗う)
昔は、2~3秒水に濡らしてジーンズで拭いておしまいだったが、今では心臓手術するお医者さんぐらいの勢いで手を洗うようになりました。
Stay safe, stay sane (安全に、正気に)
いやあ、ロックダウンで頭もおかしくなりそうです。
Levels 1-5 (レベル1 ~ 5)
アイルランドのロックダウンの段階ですね。5が一番厳しいです。
This too will pass (これもまたいつか過ぎゆく)
これは、ペルシャの寓話に出てくるフレーズで、「苦しいときも幸せの絶頂にいるときも真実であるような言葉を探せ」とソロモン王に命令された賢者が王に献上した言葉とされます。このパンデミックもいつかは過ぎゆきます。
以上です。
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